ソフトバンクにニチガス、エプコにインテル、アライアンス案は数あれど・・
新々総特では、燃料・火力事業のJERA以外にもアライアンスに関する記述が多数ある。原子力に送配電、小売りなど、経済事業の各領域でアライアンスを模索するというものだ。これを意識してか、新々総特の発表直前には新たなアライアンスに向けた取り組みが数々、公表された。
3月8日、中部電と北陸電力との3社で、原子力の災害対応や安全対策に関する協定を締結したと発表した。そして骨子発表前日の3月21日には、東電エナジーパートナーが住宅設備の設計や省エネ機器の取り扱いを得意とするエプコ(東京都墨田区)とリフォーム事業で提携すると発表した。さらに、発表当日には、送配電事業においてインテル系の情報セキュリティー会社マカフィーやNTTデータ、東芝などとサイバーセキュリティに関する提携を検討しているという報道もあった。
さらに、「4月に東電幹部がアライアンスの話をしにやってくるというから、社内は浮足立っている」と、ある電力会社幹部は明かす。やってくるのは送配電事業を手がける東電パワーグリッド(PG)の幹部。経済事業の1つである送配電事業のアライアンスを提案するためと見られる。
送配電は大手電力会社のエリアごとの独占事業であるため、地域に分断された送配電事業のアライアンスには、その効果を疑問視する声もある。ただ、送配電事業は2020年頃に法的分離(発送電分離)することが決まっており、分離後はアライアンスの持つ重みは大きくなる。既に水面下での調整は始めているものの、「送配電事業のアライアンスは発送電分離後が現実的」とある東電関係者は明かす。
新々総特が目標に掲げる、年間0.5兆円と株式の将来の売却益4兆円というのは、並大抵の数字ではない。売却益を4兆円にするには、22日の終値で1株当たり414円の株価を1500円程度までに高める必要がある。「これは原発事故前の東電の株価が高水準だった時期よりも企業価値を高めないと実現できない水準だ」(証券アナリスト)。
原発事故から丸6年。東電が福島への責任を全うするためにも、新たな成長軸を見出すことは絶対的に必要だ。先行するソフトバンクやニチガスとのアライアンスも、まだ目に見える成果が上がっているとは言い難い。新々総特によってアライアンスの環境整備が進んだ。残るは東電経営陣がしっかりと事業を推進できるかにかかっている。
電力システム改革を経て、エネルギー市場は新たな競争フェーズに入った。長年、地域独占と総括原価方式に守られてきた東電が、本当の意味で“民間企業”へ変わることができるか。その真価が問われている。