3月末には、東電と中部電力の燃料・火力部門の共同出資会社、JERA(東京都中央区)が完全統合へ向けた最終段階である「Step3」へ基本合意するとみられる。JERAは2015年4月の設立後、燃料トレーディングや海外事業を順次、統合。いよいよ国内の火力発電事業を統合するStep3が目前に迫る。

 総特は3年ごとの経営評価を原則としている。2014年に策定した現行の新総特において、この年度末は1つの期限と言える。ある関係者は、「JERAは新総特の唯一にして最大の成果。東電も経産省も何としても年度内にStep3の基本合意を結実させたいという強い思いを持っている」と明かす。

 原発事故への責任を負う東電とアライアンスを組むことは、パートナー企業にとって簡単な決断ではない。アライアンス事業による収益を、原発事故の賠償や廃炉に上限なく投入することになれば、パートナー企業にとってアライアンスの意味がなくなるためだ。つまり、アライアンスの成否は、パートナー企業にとっての「福島リスクの遮断」が握っている。

 中部電にとっても、JERA設立に際しては福島リスクの遮断が最大の懸案事項だった。JERAは当時、株主である東電への配当を福島事業に充てるという整理をして設立に踏み切った。JERAの企業価値を高め配当を積むことで福島へ貢献するというストーリーで、福島への還元を配当の範囲にとどめたわけだ。

 ただ、東電委員会では、この論点が蒸し返される場面もあった。「早期に多額の収益を福島に還元すべき」であるという考え方が、委員の中にも少なからずあったからだ。一時はJERAも議論の遡上に上った。だが東電委員会は、東電改革提言案に、「燃料・火力事業で先行して協同事業体を設営したJERAの完全統合は必要不可欠」と明記した。

 今回発表した新々総特の骨子にも、「2017年春を目途にStep3に係る基本合意を締結するなど、一連の統合プロセスを確実に推進する」としている。さらに「再編パートナーの受容可能性が高まるよう、財務健全性や自律的な事業運営が可能となる国の関与のあり方や、福島への費用負担等についてのルールを国と協議の上、整備する」と書き込んだ。

 いずれも中部電が恐れる福島リスクの遮断について、国と東電が約束したことを意味している。これでJERA最終合意への環境整備は整ったといえるだろう。