東電は自社の事業を「福島事業」と「経済事業」に大別している。福島事業は、原発事故に伴う賠償・復興、廃炉に伴うものを指す。他方、経済事業には、燃料・火力事業、送配電事業、小売事業、そして柏崎刈羽原原発など原発事故関連以外の原子力事業が含まれる。ざっくり言えば、経済事業による収益を福島事業に充てることで、福島への責任を果たそうというわけだ。

 巨額の賠償や廃炉費用の負担を抱える東電グループにとって、単独で描く成長戦略には限界がある。そこで、経済事業におけるコスト削減とアライアンスの推進によって収益性を高め、福島事業へと還元する。骨子の内容は、東電委員会が12月20日に発表した「東電改革提言案」そのものといっていい。

 つまり中身は12月時点で固まっていた。このため、「当初、新々総特の骨子は、1月31日に開催した東電HDの決算会見で発表することを検討していた」とある関係者は明かす。では、なぜ発表時期は3月22日になったのか。 

「原子力を国会の論点にしたくなかった」

 東電HDの文挟誠一常務執行役は22日の会見で、発表時期が遅れた理由を問われると、「原賠機構とのやり取りに時間がかかった。東電委員会の提言が(新々総特に)きちんと落とし込まれているか丁寧に確認したためだ」と説明した。

 だが、実際のところは、「国会スケジュールとの塩梅の調整による延期だった」と複数の関係筋は明かす。「1月末に骨子を発表すると、国会の予算委員会と時期が重なってしまう。原子力を論点にされ、政界から横槍が入るのを避けたかった」(関係者)というのが本音のようだ。

 東電委員会は原発事故に伴う費用問題を議論し、各方面への調整を重ねて提言案を取りまとめた経緯がある。東電HDや経産省が東電委員会の議論が逆行するような事態を避けたかったというのは容易に想像がつく。

 ただし、いつでも良かったわけではない。このタイミングでの発表は東電HDと原賠機構にとってデッドラインだったはずだ。