新電力ベンチャーのLooop(東京都台東区)が、関西エリアの高圧部門で関西電力の取次になることが明らかになった。

大阪・中之島の関電本店ビル(一番右)
大阪・中之島の関電本店ビル(一番右)

 「まさかLooopが関電の取次になるなんて・・・」。今回の判断に、業界関係者には驚きが走った。全面自由化後に参入した新電力ベンチャーの中でもLooopは知名度で頭一つ抜けている。そのLooopが、ある意味、大手電力の軍門に下ったからだ。

 Looopは2016年4月の電力全面自由化を契機に電気事業に参入。家庭向けなど低圧部門で基本料金ゼロの料金メニューを投入し、一気に知名度を上げた。複雑な電気料金とは一線を画した分かりやすさと安さで、着実に顧客を伸ばしてきた。

 これまで小売電気事業者として自社で電力を供給してきたLooopだが、4月1日からは関電の取次になり、Looopの関西エリアの高圧顧客には、代わって関電が小売供給する。Looopは自社顧客を関電に引き渡すわけだ。Looopは3月9日、高圧の顧客に対して契約切り替えの案内レターを発送している。

 小売電気事業者になるにはライセンスの取得が必要だ。自ら電気を調達し、独自の料金やメニューを提供できる。これに対して、取次はあくまで小売電気事業者の販売を補助する役割になる。自社商材とのセット販売など多少の裁量が認められるが、顧客から見たときの契約先は、小売電気事業者である関電になる。Looopは電力小売りで売り上げは立たなくなり、収入は取次としての販売手数料だけになる。

 独自料金メニューなどでLooopが強みとする低圧は、小売電気事業者として引き続き自社で供給する方針だ。料金やサービスを自ら企画、提供するには、小売電気事業者として電力を供給することが必須だからだ。高圧も関西以外のエリアでは、自社で供給を続ける。

 高圧の価格競争は厳しい。なかでも、関西エリアはレッドオーシャンの様相だ。2度の値上げを経て、関電から離脱した顧客は多い。これを取り返そうと、関電が躍起になって値下げ攻勢に走っているためだ。ある関係者はこう明かす。

 「この半年、関電の値下げ攻勢はすさまじく、3割引き、4割引が当たり前。1年もしたら契約件数がゼロになるのではないかという勢いで、高圧顧客が関電に奪われている。大飯原子力発電所が再稼働して、さらに関電が値下げすると対抗措置の取りようがない。卸電力取引所の価格が今冬のように高騰すると原価も上振れする。経営の安定化のための方策を考える必要があったのだろう」

 関西エリアで高圧向けの小売りを続けたところで、利益を出せそうもない。ならば、敵の懐に飛び込もうと、Looopから関電に話をもちかけたようだ。

 経営の安定化が必要だったのはLooopだけではない。相次ぐ解約で、Looopが販売を委託している代理店も苦境に追い込まれていた。「代理店のことを考えると指を加えて解約が進むのを見ているわけにはいかない」という思いがあったのだろう。

 最近、「関電が有力新電力に卸供給の提案を持ちかけている」という話も聞こえてくる。営業力に長けた新電力に電源を供給し、関西エリアだけでなく、中部電力や中国電力といった隣接エリアの顧客獲得を進めようというわけだ。

 そして、こうした関電の動きに、「中部電や中国電は神経をとがらせている」(関係者)。大手電力が新電力を使った代理戦争を始めたと言えそうだ。