前回に引き続き、空前の活況に沸く半導体業界の今を解説した、東海東京調査センターの石野雅彦氏(企業調査部 シニアアナリスト)による講演内容の一部を紹介する。今回は、半導体メモリー、有機ELパネル、大型液晶パネルの市場・投資動向を取り上げる。なお、石野氏は日経テクノロジーオンラインが2017年3月28日に開催を予定するセミナー「自動運転やAIを牽引する半導体・ディスプレー新時代」に登壇し、半導体、ディスプレー業界の現状に関するより詳しい分析や、今後の展開について講演する予定だ。

 世界の半導体業界は2000年以来の活況にあります。活況から生まれた資金が今、半導体投資に向かっています。それが、今起きている現象です。「うまくいっていない」と見られがちな日本の半導体メーカーも、世界をリードする企業の業績は絶好調です。東芝のNANDフラッシュメモリー事業の業績は過去最高水準ですし、ソニーのCMOSイメージセンサーの事業も好調です。

半導体3社の設備投資額、Samsung Electronics社の半導体設備投資額
半導体3社の設備投資額、Samsung Electronics社の半導体設備投資額
出所:各社資料より東海東京調査センターが作成
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中国スマホ台頭が驚異のビット成長を生む

 半導体の中でも、予想外の市場成長を遂げているのがDRAMです。DRAM市場は“高い山”と“深い谷”を繰り返すのが特徴です。これを30年以上、繰り返してきました。2014年9月に「iPhone 6」が発売されてDRAM市場はピークとなり、その後、予想通り下落したのですが、次のピークが予測される前に、中国製スマートフォン(中国スマホ)需要によってあっという間に元の高水準に戻ったのです。これが、現在DRAMが活況になっている最大の理由です。

 中国スマホの内蔵メモリーのRAM容量は、平均すると4G~6Gバイトあります(日本では2G~3Gバイトの製品が多い)。この中国スマホ市場が急拡大したことで、DRAMのビット成長率(出荷メモリーの総容量の伸び率)は現在、95%に達しています。これまでは20%でしたし、NANDフラッシュメモリーのビット成長率でさえ40%ですから、95%というのは驚異的な伸び率です。

 NANDフラッシュメモリーも、中国スマホ台頭の恩恵を受けています。中国スマホのNANDフラッシュの容量は、64Gバイトが普通です。大容量のメモリーが必要とされます。理由の一つに、コンテンツをダウンロードして端末のメモリーに保存したいという、強いニーズがあると言われています。

 あらゆるコンテンツのダウンロードが自由な日本とは異なり、中国では簡単にはダウンロードできない場合があります。このため、海外へ行ったときにダウンロードして、メモリーに入れておく使い方が重宝されます。クラウドサービスではだめなのです。メモリーが必要なのです。