時価総額300億円の液晶関連企業が、20兆円のトヨタを抜く

 設備投資の積極的な動きは、半導体だけではなく、液晶にも起こっています。液晶といえば、シャープがかつて1兆円を投資して会社が傾き、台湾Foxconn社(鴻海精密工業)に買収されました。その巨大液晶工場を、今度は5つあるいは6つ建設しましょうという流れになっています。1工場を建設するのに1兆円かかるのにもかかわらず、どれだけ建設するのかと思うほどです。

 昨年(2016年)の「大ヒットメーカー」はブイ・テクノロジーです。同社は2年ほど前に、他社の露光装置事業を20億円で買収しました。液晶の投資は「もう終わった」という判断で、他社が売却した事業です。この露光装置で、ブイ・テクノロジーは昨年、150億円の受注をまず獲得しました。さらに、続けざまに受注を獲得。株価はたった1年で、2000円から1万9000円にまで上昇しました。東京証券取引所第一部の株式売買代金で1位にもなりました。時価総額20兆円のトヨタ自動車を、時価総額300億円であるブイ・テクノロジーが抜いたのです。驚くべきことが株式市場では起こっており、それほど液晶関連の分野が評価されているのです。

 液晶でも、調達の主役となるプレーヤーが交代し、新プレーヤーが主導権を握る動きが見えています。これからの液晶の設備投資を牽引するのは、中国の大型テレビ市場です。その中国で売れると目されているのが「65型8K」の液晶テレビです。その結果、世界のテレビは、65型8Kが普通の時代になります。シャープが15年ほど前に液晶テレビ事業に打って出たときは、32型でした。28型のブラウン管テレビが、32型の液晶テレビになるという時代でした。2020年の東京オリンピックでは、65型8Kが普通になっているでしょう。

 液晶と同時に、新ディスプレーへの設備投資も活発です。有機ELへの設備投資です。先述のように、Samsung Electronics社の新工場「A3」「A4」の投資によって、生産能力を2017年にそれまで2倍以上に増やします。同社は有機ELだけで3000億円を投資する計画です。