ソーシャルホスピタル時代に薬局が担うべき役割は、果たして薬局の“外”からはどう見えているのだろうか。「予防」を軸とした新たな医療の姿を提唱するコンセプトリーダーとして活躍しているミナケア 代表取締役・医師の山本雄士氏の声を、日本調剤 常務取締役の三津原庸介氏が聞いた。(構成:大下淳一)

ミナケア 代表取締役・医師の山本雄士氏(写真:栗原克己、以下同)
ミナケア 代表取締役・医師の山本雄士氏(写真:栗原克己、以下同)
[画像のクリックで拡大表示]

2016年に健康サポート薬局制度が始まるなど、薬局は服薬指導だけでなく患者の日々の健康をサポートする役割が求められるようになった。「医療の専門家集団を抱える強みを生かしながら、トータルの健康マネジメントをどのように提供していくか。その案をめぐらせている」と三津原氏は話す。次世代の薬局に求められる役割はどのようなものなのか。山本氏は次のように語る。

 病気になった人が顧客で、薬局はそれを待ち受ける受け皿の一つ。そんな従来の考え方を見直し、自らの役割を再定義すべき時だと思います。「薬剤師が働く職場」「薬剤師がいて薬を扱う場所」という概念に縛られていては、薬局の新しい役割を考える足かせになりかねません。

 我々は次世代のヘルスケアの担い手として、例えばコンビニエンスストアという存在に着目しています。ヘルスケアにおける消費者とのコンタクトポイントとして重要性を増しているからです。

 薬局は消費者から見て、これまで医療やヘルスケアとの接点として最も身近な立場にいました。でもこれからは、ここに多くのプレーヤーが参入してくる。「うちには薬剤師がいます」というだけでは、消費者への訴求点としては弱いと思います。

 「かかりつけ薬局」「健康サポート薬局」ということが盛んに言われるようになりました。ただ、実際の消費者の行動パターンを見ると、薬局が健康に関する良き相談役、サポート役になることはそう簡単ではないと感じます。

 患者はまずは医療機関へ行って処方箋をもらい、それを携えて調剤薬局に行く。これが普通の行動パターンであって、処方箋も持たず健康相談を目的に調剤薬局に足を向ける人はまだ多くないでしょう。

 処方箋を持たない一般消費者をどれだけ引きつけられる存在になれるか。供給者サイドからの目線ではなく、利用者の目線からこれを突き詰めることが、次世代の薬局の役割を考える上で1つのポイントになるのではないかと思います。

 薬局はヘルスケアの新しい価値を生み出す存在にきっとなれる。でもそのためには、薬剤師も経営者も、マインドセットを大きく変えていくことが求められると思います。