“医薬品提供の場”から、利用者の日々の健康を支えるヘルスケアサービスの提供者へ。ソーシャルホスピタル時代に向けて、調剤薬局は今まさにその役割の再定義が求められている。こうした変化に積極的な姿勢を見せるのが調剤薬局大手の日本調剤だ。常務取締役の三津原庸介氏に狙いを聞いた。

(聞き手は大下 淳一=日経デジタルヘルス)

日本調剤の三津原氏(写真:栗原克己、以下同)
日本調剤の三津原氏(写真:栗原克己、以下同)
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――医療・ヘルスケアの領域では今、どのような変化が起きており、その中で調剤薬局の役割はどのように変化しつつあるのか。まずはこの点からお聞かせください。

 私がこの業界に入った時から大きな流れとしてあるのが、医薬分業へのシフトです。医療機関は長い間、「医」と「薬」の両方を担ってきた。このうち「薬」を切り出すことで、調剤薬局という日本独自の業態が生まれたわけです。医薬分業率はいまや約70%に達している。医薬の分業化という目的はほぼ達成されたと言えるでしょう。

 調剤薬局は全国で約5万8000店舗という規模に達し、コンビニエンスストアをしのいでいます。医療を支えるインフラとしてこの国に根づいた。そう言っていいと思います。

 その結果、必要とする人に医薬品を安定して提供できるようになりましたし、服薬指導を含めた医薬品提供の水準は確実に上がりました。丁寧に服薬指導するといった地道な改善を含めて、調剤薬局のサービス品質が高まってきたことは確かです。

 一方で、処方箋通りに調剤し薬を渡すという形態そのものは、昔からまったく変わっていない。患者から見ると、「医師の指示通りに薬を取り出し、一通りの説明をして会計するだけ」という受け止め方をされていることは否めません。薬剤師の疑義照会(処方内容に疑問があった場合などの問い合わせ)で処方内容が変更され、減薬につながった。こういう積極的な役割を薬剤師が果たしていることは、残念ながらほとんど知られていないんです。

 薬剤師や薬局が提供できる価値をもっと分かりやすくアピールし、認知度を高める努力が不足していた。そういう反省が我々にもあります。そしてその要因が何かと考えると、処方箋が発行されなければ何も始まらないという受け身の姿勢、そして診療報酬(調剤報酬)に縛られてきたことがあると思います。