これは認知症患者の体験を基に作成したVR(仮想現実:Virtual Reality)映像の一コマである。空間認識能力が低下しているため、実際は車の後部座席から降りるだけの場面でも、あたかもビルの上から飛び降りるかのように錯覚してしまうことを示した映像だ。
こうした没入感を生みだすVRコンテンツがさまざま登場し始めている。作り込まれた2次元の映像を視聴するのではなく、ヘッドマウントディスプレー(HMD)を使って3次元空間に作られた映像を自分の見たいように見る。いわば“体験”を提供できるツールとして、VRはさまざまな分野にその応用範囲を広げている。
もちろん、ヘルスケア分野にもVRの波はジワジワと押し寄せている。ヘルスケアの中でも医療分野に限った予測だが、シードプランニングが2017年7月に発表したVR・AR(拡張現実)・MR(複合現実)の市場展望調査によると、2021年には153億円、2026年には342億円の市場規模になる見通しだという。
VRはヘルスケア分野でどう生かされていくのか。(1)疾患体験、(2)治療、(3)医療情報の可視化、(4)介護、(5)フィットネス、という5つの領域での現在の活用事例を追った(表1)。