会話の相手はコミュニケーションロボット。こうしたささいな会話から、気づかないうちにロボットが認知機能の程度を測ってくれる――。そんな未来が、遠からずやってくるかもしれない。
認知機能が低下し、日常生活に支障をきたす状態である認知症。65歳以上の10人に1人が発症しているとされるこの身近な課題に、新たなメスを入れる動きが目立ってきた。認知機能の低下を早期に捉えられる可能性がある新たな指標を使って、認知機能を検査する。そんな研究開発が相次ぎ始めているのだ(表1)。
現在の認知症検査は、認知機能の低下がある程度進んでから現れる指標を用いた検査が多い。そのため、MCI(軽度認知障害)の状態やそれ以前の症状を捉えることが難しかった。より早期に認知機能の低下を捉えられるようになれば、認知症の進行を遅らせることに加え、そもそも認知症を発症する前に食い止めることができる可能性がある。実際、早期介入に対応した治療薬の開発も盛んになってきており、早期の認知機能検査と組み合わせる効果が期待できるからだ。
現在、研究開発が進んでいる早期の認知機能検査には、(1)会話、(2)萎縮以外の脳の状態(脳波など)、といった新たな指標を用いたものが登場してきている。以降では、その最前線を紹介していこう。