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認知症、早期発見時代への幕開け(page 5)

新たな指標で認知機能の低下を捉える研究開発が相次ぐ

2017/08/09 10:30
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

脳波を使って寝たきり患者の評価も

 一方、産業技術総合研究所と帝京科学大学、筑波大学附属病院は、脳波を計測することで認知機能を評価しようとしている。2017年度中に筑波大学附属病院で健常者を対象にした実証実験を開始し、2018年度以降には脳卒中患者などへ応用することも検討しているという。

 脳波を使用することで、運動機能に障害のある寝たきり状態の人にも検査を実施できると踏む。現在の認知症検査では神経心理検査が行われているが、ALS(筋萎縮性側索硬化症)を患う患者などは運動機能に障害があるためこういった検査を実施することが難しかった。

産業技術総合研究所 人間情報研究部門 ニューロテクノロジー研究グループ 研究グループ長の長谷川良平氏
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 今回の開発では、アンケートに答えたりボタンを押したりする操作を必要としない検査を想定する。これは、ALS患者だけではなく「言語能力や身体能力が低下した高齢者にも適しているのではないか」と産業技術総合研究所 人間情報研究部門 ニューロテクノロジー研究グループ 研究グループ長の長谷川良平氏は見る。

 脳波の計測は、具体的には被検者に課題を与えたときに生じる「事象関連電位」を測る。認知過程に影響を与えることが発生したときに連動して生じる電位のことである。例えば、カードが点滅したり複数枚のカードのなかで図形が書かれているカードが目に入ったりすると発生する。

事象関連電位の概要(画像提供:産業技術総合研究所)
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被検者に与える3つの課題(画像提供:産業技術総合研究所)
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 開発するシステムでは、被検者に(a)標的単独課題、(b)標的逸脱課題、(c)標的選択課題、の3つの課題を与える。課題は徐々に認知的負荷が高くなり、解読も難しくなる。(a)の課題における解読精度が、(b)(c)と課題が難しくなるにつれてどれほど落ちていくのかを調べることで認知機能を評価することを目指している。

 いずれの課題においても複数のカードが順番にモニターに映し出される。被検者はターゲットとなる絵柄が書かれたカードが移ったときに意識を集中させる。ターゲットが映された場合と、それ以外のノンターゲットが映された場合の事象関連電位を計測。それぞれの課題を複数回行って、ターゲットを正しく認知できたかどうかを脳波を使って評価する。

脳波測定時に電極を装着した様子(横から見た図)
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脳波測定時に電極を装着した様子(上から見た図)
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 (a)の標的単独課題では、ターゲットとなるカード以外は何も書かれていないカードが表示される。認知的な働きとは関係なく、目の前に刺激が現れることによって生じる事象関連電位を計測する。脳波のとれやすさなどには個人差があるため、この課題で計測できた脳波は対象者のベースラインとして使用する。

 (b)の標的逸脱課題は、ノンターゲットとして1種類の絵柄が書かれたカードを使用し、“仲間はずれ”となるターゲットカードを見つける課題。(c)の標的選択課題は、ノンターゲットとしてそれぞれ異なるノンターゲットの絵柄を複数用意し、ターゲットカードを見つける課題だ。

 認知的負荷が高くなるため、健常者であっても課題が進むにつれて解読精度は下がっていく。しかし、いきなり解読精度が著しく落ちるような結果であれば、「認知機能が低下している恐れがあると推定することが可能ではないか」と長谷川氏は見る。今度は、3つの課題を行った際の解読精度の下がり方と認知機能の相関関係を調べていくという。

日経デジタルヘルス Special

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