• BPnet
  • ビジネス
  • IT
  • テクノロジー
  • 医療
  • 建設・不動産
  • TRENDY
  • WOMAN
  • ショッピング
  • 転職
  • ナショジオ
  • 日経電子版

お薦めトピック

認知症、早期発見時代への幕開け(page 4)

新たな指標で認知機能の低下を捉える研究開発が相次ぐ

2017/08/09 10:30
伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

脳内に沈着する鉄濃度を調べる

 次に(2)の萎縮以外の脳の状態に着目した検査については、北海道大学病院と日立製作所のグループ、産業技術総合研究所と帝京科学大学、筑波大学附属病院のグループがそれぞれ研究開発を進めている。このうち、北海道大学病院などが着目したのが、脳内の鉄沈着である(関連記事2)。

 脳内には、加齢や神経細胞の死滅によって鉄が沈着する。これを測定することで、認知機能の低下を判断する新しい認知症検査法を生みだそうというわけだ。具体的には、脳に沈着した鉄の濃度分布と脳の萎縮パターンを使って認知症を診断することを目指している。この研究開発は、AMEDのプロジェクト(2016年11月~2019年3月)として実施しているもの。

研究開発の概要(画像提供:北海道大学病院)
クリックすると拡大した画像が開きます

北海道大学病院 放射線診断科長 診療教授の工藤與亮氏
クリックすると拡大した画像が開きます
 既に、アルツハイマー型認知症の患者の鉄沈着量は、同年代の平均に比べて多い傾向にあることが分かっているという。「鉄沈着量には、現在画像検査で指標としている脳の萎縮よりも早期の状態で異常が現れる可能性がある」と北海道大学病院 放射線診断科長 診療教授の工藤與亮氏は見る。今後、認知機能と鉄濃度分布の関係を明らかにし、最終的にはMCIの状態から評価できる検査法として確立したい考えだ。なお、鉄濃度分布は、神経変性疾患の診断に有効だといわれており、パーキンソン病や多発性硬化症などの研究にも使われている。

 検査にはMRIを使用する。脳内の鉄濃度分布を解析する「QSM(Quantitative Susceptibility Mapping)」と脳の萎縮パターンを評価する「VBM(Voxel Based Morphometry)」の2つの撮像法を組み合わせることで実現を目指す。

 ハードウエアは既存のMRIを使用し、計測と解析のソフトウエアを新たに開発する。既存のソフトウエアを使用すると、QSMとVBMのそれぞれに必要な画像を取得するために撮像に10分、解析に20分の時間を費やしてしまう。新たなソフトウエアによって5分前後の撮像を実現し、患者の負担を軽減したい考えだ。

「できる限り早期の実用化を目指している」と話す日立製作所 ヘルスケアビジネスユニット 主管技師長の尾藤良孝氏
クリックすると拡大した画像が開きます
 今回の研究開発では、少ない検査回数で確定診断を行うことも狙っている。脳の萎縮パターンによって硬膜下血腫や脳腫瘍を発症しているかどうかを確かめることはできるが、認知症の確定診断を行うことはできなかった。そのため現在の検査では、MRI検査に加えて、SPECT検査によって血流を見るなどさまざまな検査を行う必要があるのだ。脳の萎縮だけでなく鉄濃度分布も観察することで、診断を支援するさまざまな情報を一度の検査で取得できる可能性があるというわけだ。

 現在までに計測ソフトウエアの開発が終わり、健常者と患者の撮像を始めているという。今後は撮像データを使って、鉄濃度分布を用いたバイオマーカーの確立や解析ソフトウエアの開発を進める。2024年までの製品化を目指している。

日経デジタルヘルス Special

記事ランキング