健康支援アプリから、日々の運動量や健診データと連動して保険料を下げる保険商品、ヘルスケアベンチャーとの連携、健康ブランドの立ち上げ…。保険×デジタルヘルスの動きが盛んになってきた背景や、それがデジタルヘルス業界にもたらすインパクトを探った「上編」(関連記事1:保険業界は、デジタルヘルスに「経済性」をもたらすか)に続いて、今回は各社の具体的な取り組みを見ていこう。

 いざデジタルヘルス分野へ参入するに当たって、保険会社が打ち出しているアプローチには大きく2つの方向性がある。

 一つは、保険商品の差異化の手段としてデジタルヘルスを活用するというもの。アプリや健診データで加入者の運動量や健康状態を見える化し、それに保険料や給付金を連動させるような形である。比較的短期間にリターンを得ることを目指すもので、中小の保険会社に目立つアプローチだ。

 もう一つはより長期的な視点から、ヘルスケアベンチャーなど異業種を巻き込んだオープンイノベーションの仕組みを構築しようとするもの。ヘルスケア分野を将来の柱の一つに育てようと考える、大手保険会社に目立つアプローチである。

表1●「保険×デジタルヘルス」の主な取り組み(背景色をつけたのが今回取り上げる3社)
表1●「保険×デジタルヘルス」の主な取り組み(背景色をつけたのが今回取り上げる3社)
[画像のクリックで拡大表示]

 後者のアプローチを取る大手にとって、デジタルヘルスへの参入はいわば“異文化との出会い”だ。規模・確実性・自前主義などを重んじてきた各社が、ベンチャーを中心に動く流動的で不確実な世界へ飛び込むことになるからだ。明治安田生命保険 企画部 イノベーション調査室の薄井大輔氏は「協業するなら大手と組み、かっちりとした枠組みで物事を進める方がやりやすいというのが、従来の我々の感覚だった」と話す。「スタートアップと組むという経験そのものがこれまでなかった。その経験値を高めていく必要がある」(メットライフ生命保険 執行役員 経営企画担当の前中康浩氏)と考え、各社はヘルスケアベンチャーなどへの接近を図っている。

 こうした挑戦に、各社はどのように取り組んでいるのか。以下では、第一生命保険と明治安田生命保険、メットライフ生命保険という生保大手3社の取り組みに迫ろう(表1)。