「ブレークスルーを後押しする」と厚労省

厚生労働省が2015年8月10日に出した事務連絡の冒頭
厚生労働省が2015年8月10日に出した事務連絡の冒頭
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 遠隔診療の活用の機運が最初に高まったのは今から2年前、2015年8月のことだ。厚生労働省が同年8月10日に医政局長名で出した1本の事務連絡がきっかけだった(関連記事3)。「情報通信機器を用いた診療(いわゆる「遠隔診療」)について」と題したこの事務連絡は、遠隔診療に関する1997年の通知(平成9年遠隔診療通知)で厚労省が示した遠隔診療の適用範囲を、必要以上に狭く解釈しなくても良いことを通知するものだった。

 この事務連絡のポイントは大きく3つある。(1)遠隔診療の適用が可能な対象を、平成9年遠隔診療通知で例示した「離島やへき地の患者」に限定しないこと、(2)遠隔診療の適用疾患や診療内容を、平成9年遠隔診療通知で例示した9種類に限定しないこと、(3)対面診療と適切に組み合せて行われるのであれば、初診を遠隔診療とすることも可能であること、である。

 この事務連絡に携わった厚労省の関係者は「ICT(情報通信技術)が発展している中、医療も当然これを取り込んでいくことになる。その観点から、患者の利便性向上や、医師の働き方改革に資するブレークスルーを後押しする必要があると考えた」と、発出の経緯を説明する。

 この事務連絡を受けて、無診察治療を禁じる医師法第20条への抵触などを恐れ、二の足を踏んできた事業者が、医療機関向けの遠隔診療サービスを立ち上げる動きが2015年秋以降に相次いだ。遠隔診療に関して、厚労省が“お墨付き”を与えたという受け止めがなされたわけである。

 オンラインでの予約やビデオチャット、クレジットカード決済といった、遠隔診療のプラットフォームを構築することは、ITサービス事業者などにとってはそれほど難しいことではない。参入が相次ぎ、現在では非常に多くの遠隔診療サービスが立ち上がっている(表1)。「ここまで大きな動きになるとは想定していなかった」と前出の厚労省の関係者は明かす。

表1●事業者が提供する主な遠隔診療サービス
表1●事業者が提供する主な遠隔診療サービス
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