「マジで?これ僕なん?不摂生してるとこうなるんやなあ。誰なん、このアプリ作ったの?」。お笑い芸人扮する会社員が、スマートフォン画面に映る“70歳の自分”にため息をつくと、「それは第一生命です」とナレーションが入る――。

「健康第一」アプリのFaceAI機能(画像提供:第一生命保険)
「健康第一」アプリのFaceAI機能(画像提供:第一生命保険)
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 2017年春に盛んに流れた第一生命保険のテレビCMは、保険会社のものとしては異例の内容だった。登場したのは保険商品ではない。社名に引っ掛けて「健康第一」と名付けた健康支援アプリである。

 “70歳の自分”を予想してみせたのは、このアプリの「FaceAI(フェイスエーアイ)」と呼ぶ機能。スマートフォンで撮影した顔画像を基に、BMI(body mass index)と年齢に応じて自分の顔がどのように変化するかをシミュレートできるものだ。同アプリの狙いは、まずは日々歩くことから、未来の自分の姿を理想に近づけることを支援することである。

 このテレビCMが象徴するのは、ここにきて加速する「保険×デジタルヘルス」の動きだ。スマートフォンやウエアラブル端末、ビッグデータや人工知能(AI)などのICTを活用し、加入者の健康を支えるサービスを提供する。大手から中小まで、保険会社がこぞってそんな取り組みに本腰を入れ始めた(表1)。

表1●「保険×デジタルヘルス」の主な取り組み
表1●「保険×デジタルヘルス」の主な取り組み
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 万一の備えとしての保険商品ではなく、加入者の日常に寄り添い、生涯にわたり健康を支えるサービスを提供する存在へ。各社はそんなシフトチェンジを図ろうとしている。

 なぜ今、保険×デジタルヘルスの動きが盛んになってきたのか。そして、この動きはデジタルヘルス業界にとってどのようなインパクトを持つのか。「上編」の今回は、その2つについて探っていこう。