20回のトイレが8回に

 介護現場で実際に使ってみることで、DFreeのさまざまなメリットが明らかになったと中西氏は話す。「尿を漏らしたくないがために1日に20回もトイレに行っていた高齢者が、尿が実際にはまだたまっていないと分かることでトイレの回数を8回に減らすことができた。本人も自信がつき、積極的に外出するようになった。夜間に徘徊していた高齢者のケースでは、なぜ徘徊するかがよく分からなかったが、DFreeをつけることで膀胱に尿がたまると徘徊していることが分かった。適切なタイミングでトイレに誘導することで、きちんと眠れるようになった」(同氏)。

 分かってきたのは、排泄周りのトラブルを解消することで、介護の質が大きく高まること。「排泄ケアはこれまで、介護事業者にとっては“作業負担”だったが、DFreeによって“サービス”として訴求できるようになった。おむつ代や人件費の削減にもつながり、経営的な視点からもメリットがあると高く評価してもらっている」(中西氏)。

 DFreeは国内だけでなく、海外でも大手介護施設チェーンへの今夏の導入に向けた検討が進んでいる。これを含め、国内外を合わせて20万床規模の導入案件が進んでいるという。

 今後、新たに開拓に力を入れるのが、脳卒中などで倒れた患者のリハビリを支援する用途だ。「在宅ケアに移るまでの期間を左右するのが、排泄を不自由なくできるかどうか。DFreeを使ってもらい排泄を支援することで、リハビリ期間の短縮につながると考えている」(中西氏)。福岡市の医療機関と組み、この用途に関する実証試験を進めていく。

 超音波の特性を生かして、皮下脂肪や脂肪肝の測定など、排泄以外のマーケットも狙う。高齢者の運動機能評価などで重要な、筋肉量を可視化する用途も有望という。DFreeの大量生産を見据え、EMS(機器受託製造)世界最大手の鴻海グループとの連携も模索している(関連記事)。さまざまな用途を含め「2020年までに1000万人の利用者を獲得したい」(中西氏)と目標は大きい。

においで検知するベッド

 同じく介護施設などでの利用を想定し、“漏らしてしまった後”に対処する技術の開発も進んでいる。医療・高齢者用ベッド大手のパラマウントベッドは2016年4月、ベッド上での高齢者の排泄をにおいで検知し、介護者に通報する「排泄検知センサー」をベンチャー企業のaba(千葉県船橋市)と共同で開発。現在、製品化に向けてユーザーとの技術評価を進めている。

排泄検知センサーのシート部をベッドに設置した様子(提供:パラマウントベッド)
排泄検知センサーのシート部をベッドに設置した様子(提供:パラマウントベッド)
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 排泄を「においで検知する」こと以外の詳細は公表していないものの、パラマウントベッドはその3つの特徴を明らかにしている。

 第1に、おむつを開けなくても排泄したことが分かる。においで検知する仕組みのため、排泄の有無の確認などの業務負担を軽減できる。第2に、排泄後すぐに検知し介護者に通報する。これにより認知症患者などの便いじりを防ぎ、陰部感染や褥瘡(じょくそう)のリスクを軽減できるという。第3に、身体に何も装着する必要がないため、肌が弱い高齢者でも不快感を感じなくて済む。