今日、株式市場を揺るがす大きな出来事といえば、シャープと東芝の経営の行き詰まりであろう。その根本的な原因が事業不振であることは言うまでもない。しかし振り返れば両社とも、20世紀には製造業の雄とされていたのである。21世紀に入ってから、急に新事業が期待通りに立ち上がらないという事態に陥ったことが共通している。

初飛行から戻った小型ジェット旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」
初飛行から戻った小型ジェット旅客機「MRJ(Mitsubishi Regional Jet)」
2015年11月11日、県営名古屋空港
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 両社に加え、残念ながら行く末が懸念されるのが、三菱重工業である。その象徴がジェット旅客機「MRJ」の開発だ。先行したHondaJetが事業化に成功しつつあることと比較され、風当たりも強くなっている。

 ただ、HondaJetとMRJを見て、民間開発は成功して国策開発はうまくいかない、と判断するのは早計である。7~8人乗りの小型機であるHondaJetですら20年以上の開発期間を費やしていることを見れば、MRJを核とした近中距離地域航空事業という新事業の立ち上げには、そもそも数十年の開発期間が必要とされる。今の段階で事業の成否について騒ぐには当たらない。

 そこでMRJ事業化をプロジェクトとして捉え、その成功の条件を考えてみたい。