アライアンスにおいて、パートナー企業の影響で資金調達に重要な「信用力」が低下することはあるだろうか。福島第1原子力発電所事故で経営危機に陥った東京電力グループは、再建計画の最重要施策として他社とのアライアンスを掲げる。だが、アライアンス相手から見たとき、東電との提携にリスクはないのか。格付け会社ムーディーズで電力業界の信用力評価を手掛けた経験をもつアジアエネルギー研究所の廣瀬和貞代表に解説してもらう。


 東京電力グループの新たな再建計画が、間もなく完成し、経済産業大臣の認定を受ける予定だ。経産省は2016年10~12月、「東京電力改革・1F問題委員会」(東電委員会)を設けて同社の経営課題を議論した。委員会が12月に取りまとめた「東電改革提言」を基に、東電と東電に出資する原子力損害賠償・廃炉等支援機構(原賠機構)が「新々総合特別事業計画」(新々総特)を策定している。これに先立ち、3月22日に新々総特の「骨子」が発表された。

 この再建計画は、今回の新々総特で第3弾となる。2012年5月に最初の「総合特別事業計画」を策定。第2弾に当たる「新・総合特別事業計画」(新総特)は2014年1月に経産大臣が認定した。新総特の達成状況については、原賠機構が行った「経営評価」が近く発表される予定である。

 現在の東電の収益状況や財務状態を鑑みるに、新総特が目指した計画数値は達成されている。東電の連結純資産額は2016年12月末時点で2兆4873億円となり、新総特で計画した「2017年3月末で約1兆9900億円」を超えている。

 火力発電燃料の単価下落など外部要因が有利に働いた面もあるが、東電自身のコスト削減などの努力による面も大きい。つまり、自助努力の及ぶ範囲において、東電は事業計画を満たすだけの成果を挙げている。

 ただし、新総特、そして今回骨子が発表された新々総特においても、東電の自助努力だけでは達成しえない大方針が盛り込まれている。それは、他社との共同事業体の設立を含む再編・統合である。アライアンスにより賠償・廃炉のための資金を生み出し、企業価値を高めて株式売却益を除染費用に充て、原子力発電所事故に伴う福島への責任を果たすことが求められている。

 しかし、他のエネルギー会社との共同事業体の設立には高いハードルがある。パートナー企業から見れば、東電の福島への責任の分担を強いられる可能性への危惧がある。言い換えると、東電のパートナーとして「福島リスク」を負うことで、資金調達能力の基盤である「信用力」が東電の信用力の影響を受けるのではないか、という懸念だ。