米国では「デマンドチャージ」導入も後押し

 米国ではアリゾナ州とハワイ州でも家庭向け蓄電池システムの導入が活発化している。

 アリゾナ州では前述のデマンドチャージを採用した影響が大きい。同州では太陽光パネルの発電量が落ち、夕方の電力需要が増える17~19時の時間帯に急激にピークが立つようになった。これを抑制するために、1家庭の需要が7kW程度になると月額で100ドル(1万1000円)近いデマンドチャージが課されることもあるという。

 そこで蓄電池を使って電力需要の平準化に乗り出す家庭が出てきた。アリゾナ州に続いて、ノースカロライナ州とサウスダコタ州も一般家庭へのデマンドチャージの導入を検討している。

 ハワイ州ではネットメータリング制度が廃止され、太陽光の買取価格が大きく下がった。加えて、太陽光発電の普及が拡大した地域では、電力会社による余剰電力の買い取りを行わず、自家消費を推奨する「セルフ・サプライ・プログラム」が始まった。これが蓄電池の普及を後押ししている。

 売電目的の系統接続量には制約があるのに対して、プログラムに応じた家庭は、太陽光発電など自宅に設置した分散電源の系統連系が早期に認定されるなどの特典を受けられる。太陽光が発電しないときや蓄電量が足りないときは、系統から電力が補給されるため、電力不足に陥るリスクはない。系統への逆潮流を最低限に抑えることで、より多くの家庭が分散電源を導入できるようにするのが同プログラムの目的だ。

 太陽光発電といえば、国内ではまだコスト高のイメージが強い。ただ、世界では太陽光パネルだけでなく、建設や設置工事を含めて低コスト化が進み、「安い電気」という認識が広がり始めている。発電の不安定さを克服するための蓄電池投資さえも見合うケースが増えてきた。そうした国や地域で芽生え始めた蓄電池ビジネスが、大規模集中型を軸に発展してきた世界の電力システムを大きく変えようとしている。

■変更履歴
本文で「ニュージーランドもFITは廃止の方向にある」としていましたが、正しくは「ニュージーランドでは政府の法律としてFITが制定されておらず、各電力会社に買取価格は任されている」となります。お詫びして訂正します。本文は修正済みです。 [2017/4/11 14:02]

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