オーストラリアやニュージーランド、米国で家庭向け太陽光発電システムと組み合わせて使う蓄電池ビジネスが広がり始めている。新規事業者が続々と参入。地元電力会社も追随し始めた。太陽光を取り巻く制度変更と蓄電池のコスト低下が追い風となり、海外では一足先に蓄電池の普及に弾みがつきそうだ。

 オーストラリアでは、電気料金が高止まりしている中で、2017年からビクトリア州、南オーストラリア州、ニューサウスウェールズ州という人口集中地域の3州で、屋根置き太陽光発電(出力10kW以下)を対象にした固定価格買取制度(FIT)が廃止される。太陽光発電システムを導入しても家庭の売電収入は大きく減る。

豪AGL、世界で初めて家庭向けに蓄電池を発売

 FIT廃止を見越して、電力会社として世界で初めて家庭向けに蓄電池を売り出したのが、オーストラリアの大手電力会社であるAGLだ。同社は2015年5月から、台湾AU オプトロニクス製のリチウムイオン蓄電池を内蔵した容量7.2kWhの蓄電池システムを供給してきた。

 AGLが発売した蓄電池システムは、PCS(パワーコンディショナー)や制御システム、太陽光パネルとの接続機器を一体化したもので、価格は1台1万豪ドル(約85万円)以下とした。これは、それまでのリチウムイオン蓄電池システムの3分の1程度という安さだ。

 太陽光発電はパネルの価格が下がってきたうえ、自家消費すれば託送料金(送配電網の利用料)の負担がない分、家庭の電力コストを下げられるケースが増えている。電気料金の高い地域ほど恩恵は大きい。蓄電池を使って電力会社から高い電力の購入を減らすことで、長期的には蓄電池コスト含むトータルの電力コストを安くできるというのがセールスポイントだ。

 AGLは顧客との間で太陽光発電システムと蓄電池システムに関する長期のサービス契約を結ぶ。AGLがEMS(エネルギー管理システム)を介して顧客のシステムを最適運用する。いまは新技術への関心が高いアーリーアダプター(初期採用者)が導入し始めている段階だが、今後さらに蓄電池の価格が下がるにつれ、2020年ごろには大きな市場に成長すると同社は予測する。