4月にスタートする都市ガス小売り全面自由化。全国的にも注目を集めるのが、東京ガスvs東京電力エナジーパートナー(EP)という、首都圏の大手都市ガスと大手電力のガチンコ勝負だ。
東電EPは昨年、LP(液化石油)ガス販売最大手の日本瓦斯(ニチガス)とタッグを組んで家庭など小口向け都市ガス市場に参入することを表明。東電EP陣営についたニチガスが2月20日に発表した4月からの新料金は、東ガスの規制料金(大手都市ガスなどには4月以降も当面維持が義務付けられている)と比べて、基本料金は同額だが、従量料金が5%安い。東ガスはガス代1000円につき5ポイントを還元する新メニュー(自由化料金)を1月末に発表しているが、ガス単体なら現時点ではニチガスの方が安い。
だが、料金競争は緒についたばかりだ。今は互いの出方を探っている段階と言っていいだろう。ニチガスの和田眞治社長は「東ガスが下げてくれば、我々も下げていく」と強気だ。
東ガスと東電EPは料金競争だけでなく、互いの陣営強化にも乗り出す。首都圏の電気・ガスの勢力図がどう塗り替わるかは、他の事業者を巻き込んだ合従連衡が大きく左右することになりそうだ。
2月2日、東ガスは関東のLPガス販売大手、サイサン(さいたま市)との提携を発表した。これにより東電EP、東ガスのいずれの陣営も、小売り強化の鍵をLPガス事業者が握る形になった。
サイサンの役目はニチガスエリアの攻略
サイサンは東ガスからガスの卸供給を受け、全面自由化が始まる4月にも都市ガス小売りに参入する。会見の場で、東ガスの広瀬道明社長は「(サイサンには)東ガスの卸先以外のエリアを任せることになる」と話した。広瀬社長の言葉が意味するところは、東電EPのパートナーとなるニチガス系列の都市ガス事業者のエリアをサイサンが攻略するということにほかならない。
全国では200を超す都市ガス事業者が導管を使ってガスを家庭や工場に供給している。とりわけ千葉、埼玉、神奈川など関東には数多くの中小都市ガス会社がひしめいており、これらの中には東京ガスが導管を介してガスを卸供給している事業者が20社以上ある(一部はローリーによる卸供給)。東ガスから見れば間接的に自社のガスを販売してくれる“仲間”である。