前編では「もんじゅ」を廃炉に導いた背景となる、動力炉・核燃料開発事業団(動燃)の発足の経緯や運営の実態をみてきた。後編ではいよいよその組織的不備が、どのようにして事故や不祥事の発生を引き起こし、もんじゅを廃炉に導いていったか見ていこう。

高速増殖原型炉「もんじゅ」の全景
高速増殖原型炉「もんじゅ」の全景
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優等生の「常陽」の設計を引き継いだもんじゅ

 図にもんじゅのシステム構成を示し1)、表では 「常陽」ともんじゅの仕様4)を比較したものである。両者が瓜二つであるというのが見て取れるはずだ。それもそのはずもんじゅは、常陽の設計技術と運転経験を生かして設計・建設されたからだ。

「もんじゅ」システム構成
「もんじゅ」システム構成
(図の簡略化のため、冷却系は、3系統のうち1系統のみ表示、文献4)より引用)
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「常陽」と「もんじゅ」の仕様の比較
「常陽」と「もんじゅ」の仕様の比較
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 常陽は、当時もその後も世界でまれなくらい事故や不祥事が少ない優等生的存在での実験炉だった。目立つ事故は2007年6月11日に発生した、燃料交換の際に一部の破損片が原子炉容器の底に落下した事故くらいである。一方、常陽の設計を引き継いで約7倍にスケールアップし、発電機能を追加したもんじゅでは液体ナトリウム漏洩・火災事故や燃料交換装置の炉内中継装置が落下5)という致命的な事故を起こしている。この違いはなぜ起こるのか。実はその原因は明らかで、もんじゅの事故は常陽とまったく同じでなかった部品や機器の設計に起因するのである。