高集積のIPM(Intelligent Power Module)は、自動車部品の電動化で重要な役割を果たす。IPMが新世代のコンパクトで効率的かつ高信頼性モーター駆動を可能にすることで、内燃機関のエネルギーを浪費する機械的駆動の負荷を取り除ける。

厳しくなるCO2排出規制

 自動車に対する最近の規制によって、1マイルあたりのCO2排出量が低い、経済的なクルマの需要が喚起されている。例えば、現在の自動車税制では低公害車が優遇されている。また、EUの加重平均CO2排出量指令などの新しい法律を自動車メーカーは順守しなければならない。低燃費車を提供できないブランドには、ペナルティーが科せられるからだ。現在のEUの規制では、すべてのクルマの平均CO2排出量は130g/kmを超えてはならず、これを順守しないメーカーは販売した各車両について過剰排出補償料を支払う必要がある(図1)。CO2排出量の上限は2021年までに95g/kmへ削減される予定で、その先もCO2排出量削減規制は継続的に強化されることになっている。

図1●主要国における乗用車のCO2排出目標。
図1●主要国における乗用車のCO2排出目標。
出典:環境省ウェブサイトhttps://www.env.go.jp/policy/tax/misc_jokyo/attach/trend.pdf
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 より高い燃費を達成するために自動車メーカーが取るべき方法として、エンジンで駆動される従来方式の主要サブシステムを電気駆動方式に置き換えることが挙げられる。例えば、ウォーターポンプ、オイルポンプ、空調ユニット、ターボチャージャー、パワーステアリングなどを電気駆動方式に置き換える。これによってエンジンの機械的負荷が効果的に低減され、内燃機関が生み出すエネルギーの多くを車両の駆動に使用できる。ポンプ、ファン、コンプレッサーなどの機械的モーター負荷を電気ユニットに置き換えると、燃料消費量を3~5%も削減できる。

 車両の電気エネルギーは、エンジンが駆動するオルタネーターによって充電されるバッテリーから供給されるので、自動車業界は電気駆動システムの効率ができるだけ高くなるよう積極的に取り組んでいる。新しい電気駆動システムは大きな電力を使うべきでなく、エネルギー損失を最小限に抑えるように設計する必要がある。これで、トータルでの燃費を最大化する。もう一つの問題は、電気駆動式システム数の増加が車両の配線ハーネスのサイズと重さに与える影響である。自動車メーカーは、ハーネスが過度に大きくかつ重くならないようにするための有効な技術を必要としている。

 電気システムへの置き換えに向けたハイ・パワー・モーター・ドライブの設計は、自動車メーカーがエネルギー効率、物理的サイズ、重さの各目標を達成することに、大きな影響力を持つ。