サーバー・オン・モジュール(Sever On Module:SOM)の登場によって、COM(Computer On Module)/モジュールコンピューターが多くのサーバーアプリケーションで必要な機能や性能を備えるようになった。すなわち、サーバーの高い性能や機能が、従来に比べて非常に容易に利用できるようになった。この記事では、COMメーカー大手のドイツcongatec社のChristian Eder氏(Director Marketing)がSOMのインパクトや、SOMとCOMの関係、SOM規格のポイント、SOM製品の実例などを紹介する。同氏はCOMやSOMの規格化を担う機関の「PICMG:PCI Industrial Computer Manufacturers Group」でも仕様策定などに携わっている(日経テクノロジーオンライン編集による要約)。

 標準的なコンピューティング機能がCOM(Computer On Module)と呼ばれる小型のモジュールに実装されたことで、さまざまな電子機器のハードウエア開発が容易になった。そのCOMの高性能版であるSOM(Sever On Module)の登場により、多くのサーバーアプリケーションで必要な機能や性能を容易に活用できるようになる。例えば、SOMはクラウドサーバーやフォグサーバー、基地局、SDN(Software Defined Network)/NFV(Network Functions Virtualization)インフラストラクチャーなどのハードウエア開発を容易にする。

カラー写真部分がSOM(またはCOM)。
カラー写真部分がSOM(またはCOM)。
高密度コネクター(オレンジ色)で白黒写真のキャリアーボードと接続する。congatecの写真。
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 SOMはCOMと同じく、高密度なコネクターを介してキャリアーボードと接続する。キャリアーボードには、ユーザーやアプリケーションに特化したハードウエア機能が実装される。SOM/COMとキャリアーボードを組み合わせることで、特定のプロジェクトやアプリケーションに合致させたハードウエアの開発が可能になる。標準機能とカスタム機能の分離により、迅速なカスタマイズ設計が可能になり、開発コストが削減したり、スケーラブルなソリューションの開発が可能になったりと、多くのメリットがもたらされる。SOMやCOMを利用すると、ユーザーは差異化につながる独自のコア技術に集中できるため、市場や顧客の要求に迅速に対応し、在庫コストを最小限に抑えられる。また、標準化されたCOMやSOMはセカンドソースの利用が容易である。

広帯域通信が可能

 COMとSOMを比べると、SOMは高いコンピューティング性能とサーバー向けの通信インターフェース(最大4チャネルの10Gビット/秒Ethernetや最大32レーンのPCI Express)を備えることが特徴である。一方、COMに搭載されている組み込みアプリケーション向けのオーディオやビデオインターフェースはサポートしていない。SOMは、サーバーファームとしての制御が不要なデータセンター向けサーバーアプリケーションに適用できる。また、SOMは、各種の組み込およびIoTサーバーにも適している。

 こうしたサーバーでは、スペースが限られている上に、インダストリー4.0で不可欠な多数の制御を接続する広帯域幅インターフェースが求められる。最近の調査によれば、組み込み設計エンジニアは、当初に与えられたよりも短い時間内で多くのプロジェクトを管理し、各プロジェクトを実行することが求められており、時間的なプレッシャーはかなり強くなっている。こうした組み込み設計エンジニアの作業効率化にSOMは大きく寄与する。個々の部品を組み合わせることなく、アプリケーションに特化したサーバーのコア部分をSOMで実現できるためだ。