防犯カメラのパンやチルトなど、モーション(動き)とポジショニング(位置決め)が必要なアプリケーションでは、ステッピングモーターやサーボ制御のブラシ付き/ブラシレスDCモーターが使われる。このうち、ステッピングモーターはステップ数をカウントして制御する。位置情報のフィードバックが不要なため、制御システムは容易に設計でき、製造コストも低い。ステッピングモーターを使うシステムの設計では、ステッピングモーターはデジタル命令で制御されるものと想定している。ステッピングモーターでは、位置制御向けのフィードバックが不要なため、オープン・ループ・システムになる。

ステッピングモーターと制御方式

 ステッピングモーターは、ローターの構造によって3つのタイプに分けられる。1つめの可変リラクタンス(Variable Reluctance:VR))タイプは、歯車状のローターと巻線形ステーターを備えており、マイクロメカニズムの位置決めなどの低トルクアプリケーションに向く。2つめの永久磁石(Permanent Magnet:PM)タイプは、一般にVRタイプよりも安価で、N極とS極が交互に配置された永久磁石が並ぶローターを内蔵している。3つめのハイブリッド(HB)タイプは、磁石と歯付きローターを持ち、より強力なトルク特性を生み出せる。さらに、3つのタイプいずれにも電磁コイルの巻き方が異なるユニポーラ・ステッピング・モーターとバイポーラ・ステッピング・モーターの2種類がある。以下、この記事ではバイポーラ・ステッピング・モーターについて説明する。

 ステッピングモーターはそれぞれ固有のステップ角を持つ。一般に、ステップ角はPMタイプで7.5~15度、HBタイプでは0.9~3.6度となっている。HBタイプのコストはPMタイプと比較して非常に高い。ステップ角はモーターの磁極数によって決まる。例えば、磁極数が48個のモーターのステップ角は7.5度(=360度/48)、磁極数が400個の場合は0.9度(=360度/400)である。なおこの記事では、図1に示すステーター(固定子)磁束の電気角とステップ角とは区別している。

[画像のクリックで拡大表示]

 図1はマイクロステップによって、磁極間に16個の電気角が生じることを表す。ステップ角(2つの磁極間の角度)はモーターによって異なり、この図は磁極が90度で配置されているモーターを示している。この場合、θ0-θ16はそのままローター位置を示す。ステップ角が7.5度の場合は、この図の90度を7.5度と見なせばよい。

 なお、ステップ角は、モーターがフルステップ動作するときには、1ステップで移動するローターの角度に相当する(図2)。例えば、ステップ角が7.5度のモーターは、フルステップ動作時は48ステップで360度回転する。ハーフステップではこの2倍のステップ数、1/4ステップでは4倍のステップ数を要する。

 すなわち、ステッピングモーターはマイクロステップ分解能の励磁モードにおいては、より小さな角度でのステップ動作が可能である。したがって、マイクロステップを利用すれば、安価なモーターでステップ角もそれほど小さくなくても、振動やノイズを低減できる。   

図2 ステッピングモーターのステップ数や回転角
励磁
モード
フルステップ駆動時の1ステップ分と同等の電気角に必要なステップ数1ステップによるモーターの回転角モーター1回転(360度)に必要なステップ数
フル17.548
ハーフ23.7596
1/441.875192
1/880.9375384
1/16160.4688768
1/2562560.029312288
1/5125120.014624576