Threadは、新世代のワイヤレス・メッシュ・ネットワーク通信規格である。「モノ(Thing)」をインターネットに接続するための中枢通信技術として注目を集めている。ここでいう「モノ」とは、マイクロコントローラー(MCU)や、センサー、無線通信、ソフトウエアを内蔵し、消費電力に敏感で大きさに制約のあるデバイス(機器)のことである。無線通信は、これらのデバイスをインターネットにつなげる橋渡し役を担い、デバイスの遠隔制御および自動化を可能にさせる。

 市場には相互接続に対応した複数の無線通信方式が存在する。その中で、Threadはコネクテッドホームという特定のニーズを想定している。Threadは、実績に裏付けられた既存規格を活用した、低消費電力で安全かつスケーラブルなIP(Internet Protocol)ベースのワイヤレス・メッシュ・ネットワーク・プロトコルである。モノのインターネット(IoT)を実現する上で懸念される、重大な技術ギャップを埋めることができる。

前例のないレベルの大規模な通信革新

 調査会社の米IHS Technology社は、2025年までにはIoTによって接続されるデバイスが75.4億台にまで成長すると予測している。このような前例のないレベルの大規模な通信革新は、1970年代初期に米Intel社が発表した初めての商用マイクロプロセッサーIC「4004」に始まる技術革新に端を発している。その10年後の1980年代に入ると、デスクトップコンピューターの技術は飛躍的に進み、個人の生産性が爆発的に向上する新時代を迎えることになった。

 1990年代にはインターネットの拡大と合わせるようにノートパソコンが登場し、「コネクテッドモビリティー」が始まった。しかし、ケーブルなしでインターネットを手軽に体験できるようになったのは、2000年代半ばにスマートフォンが登場してからである。スマートフォンは、手のひらサイズのデバイスにパーソナルコンピュータの演算パワーとインターネット接続機能を組み合わせたものである。

 低消費電力コンピュータ、センサー、通信における進歩は、新しいクラスのコネクテッドデバイスを生み出した。小型で限られた処理能力だが、バッテリーで駆動するこれらの「モノ」は、個人の生産性だけに焦点を合わせたものではなく、自宅、職場、都市環境全体を取り巻くすべてを、まったく新しく有用な方法で感知し、対話し、自動化するものとなった。図1では、コネクテッドデバイスの進化に伴うこのような変化を可視化した。

図1 パソコン、ノートPC系、IoT(Internet of Things)
図1 パソコン、ノートPC系、IoT(Internet of Things)
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