中国市場で自動車の普及が進んだり、車内の快適さを追求する声が大きくなったり、省エネと環境保護に対する意識が高まったりしている。これらに伴って、車載HVAC(Heating, Ventilation, and Air Conditioning)システム(車載エアコン)の性能に対する注目度が上がってきた。

 自動の車載エアコンは、従来の手動の車載エアコンと比較して、燃費を大幅に改善し、二酸化炭素の排出量を削減できる。自動の車載エアコン(以下、車載エアコン)の中核部はECUであり、各種の制御方法や精度を組み合わせることで、求められるシステム性能を確実に実現する。

 米ON Semiconductor社は、車載エアコンのフラップアクチュエーター用の様々なドライバーICを提供している。これらのICには完全な診断機能と保護機能が備わっており、性能と信頼性の向上に寄与する。

 以下、この記事ではまず、車載エアコンのフラップアクチュエーターの構成を示し、様々な障害状態や保護要件について議論する。次に、診断機能方法の1つを取り上げて、その実装について説明する。

主要な制御部品の1つ

 車載エアコンにおいて、フラップは主要な制御部品の1つである。システム動作モードの制御や、温度の調節、空気循環の設定などに使われる。一般的なシングルゾーン車載エアコンは、3つのフラップアクチュエーターを持つ。デュアルゾーン車載エアコンには4つのフラップがあり、車室(座席部分)の温度を調節する。高度な車載エアコンには、11個以上のフラップを装備して複雑な機能を実行できるものもある。

 代表的なフラップアクチュエーターの動作電流は60mA、ストール電流は約400mAである(図1)。フラップ位置をいつでも変更できるように、フラップモーターの正転/逆転/停止を制御するHブリッジ回路が欠かせない。

図1 車載エアコン向けの代表的なフラップ
図1 車載エアコン向けの代表的なフラップ
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