ウルトラブックやコンバーチブルタイプの2in1PCといった携帯性に優れたパソコンでは、パワーマネジメントIC(PMIC)が長いバッテリー(電池)駆動時間を実現している。ただし、PMICの役割はそれだけではない。最新のPMICは、モバイル機器の小型化や薄型化、軽量化も牽引している。

モバイルの課題を解決すべく改善が進む

 現代人の生活にデジタル技術は欠かせない。ユーザーは、必要なときに必要な場所で使えるパソコンを望んでいる。つまり、薄くて、軽くて、常時ネットワークに接続されていて、頻繁に充電する煩わしさのない「ウルトラ・モバイル・コンピューター」に対する需要が高まっている。

 バッテリー駆動時間や外形寸法、厚さ、重さに関するユーザーの期待に添ったパソコンを実現するには、電力効率の高いパワーマネジメント技術が欠かせない。例えば、米Intel社が策定した「VR12.x」や「IMVP(Intel Mobile Voltage Positioning)」といった電源仕様がある。これらは、パソコン用プロセッサー向け電源機能の簡素化と標準化を目的としたもので、アクティブモード時とスタンバイモード時の電力効率を最大化する動作モードをサポートしている。

 IMVPの最新仕様が「IMVP8」である。米Intel社のプロセッサーIC「Atomファミリー」などに向けたもので、供給電流が最大になるアクティブモード時に、CPUのコア電圧を低減する機能を備える。消費電力は、P=V2/Rで決まる。つまり電圧の2乗に比例して増大するため、コア電圧を低減すれば消費電力は減る。この結果、バッテリーに蓄えたエネルギーの消費量の最小化だけでなく、プロセッサーの発熱量も低減できる。発熱量が減れば放熱対策を簡素化でき、筐体の重さや機器の厚さを削減することが可能になる。

 パワーマネジメント技術の進化がもたらす恩恵を受けるのはパソコンのバッテリー駆動時間だけではない。スマートフォンを使いこなすユーザーは、即座に起動することを求めている。この要求に応えるのが、Intel社と米Microsoft社が開発した「Connected Standby(CS)」仕様であり、低消費電力の状態でネットワーク接続を維持する新しいプライマリー・オフ・モードである。ACPI(Advanced Configuration and Power Interface)に準拠する既存のスリープモードやハイバーネートモードと比べると、極めて短時間での再起動が可能で、ネットワークの再接続に伴う待ち時間からユーザーを解放できる。