前回では、入出力両方の電流・電圧を正弦波にして交流(AC)―交流(AC)変換できる電力変換器「マトリクスコンバータ」と、その実現技術について紹介した。中でも、SiCパワー素子を適用して、どのようにしてマトリクスコンバータを小型化したのか、という点を中心に解説した。後編では、フィルターの小型化や試作したマトリクスコンバータの特性評価などについて紹介する。

インダクター成分を削減

試作したマトリクスコンバータの仕様
表1
試作したマトリクスコンバータの仕様
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 まず、試作したマトリクスコンバータの仕様を下記する(表1)。入力電圧は380~480Vで、出力電流は50A、出力電力は30kWである。パワーモジュールは、前述のようにフルSiC品を採用する。モジュールのパッケージは、Si IGBTモジュールに利用したものと同じにした。

 フルSiC向けに新たなモジュールを開発すると周辺部材も変更になるため、従来品との公正な特性比較ができないからだ。ただし、キャリア周波数を高めるために、モジュール内のチップ配置や配線などを変更してインダクタンス成分を大幅に削減している。