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HOMEエネルギーパワーエレクトロニクスゲストペーパー:総合 > SiCで電力変換器の“究極”目指す

ゲストペーパー:総合

SiCで電力変換器の“究極”目指す

マトリクスコンバータの出力を正弦波に(前編)

  • 原英則=安川電機 技術開発本部 開発研究所 パワーエレクトロニクス技術部 部長
  • 2016/02/22 00:00
  • 1/4ページ
出力まで正弦波にしたマトリクスコンバータを試作した
図1
出力まで正弦波にしたマトリクスコンバータを試作した
[画像のクリックで拡大表示]

 我々は、入出力両方の電流・電圧を正弦波にして交流(AC)―交流(AC)変換できる電力変換器「マトリクスコンバータ」を開発した1,2)。従来のマトリクスコンバータ製品「U1000」では、入力だけが正弦波だったが、今回は出力まで正弦波にした(図1)。さらに変換効率を高め、最大変換効率は98%以上である。入出力の両方の電流・電圧を正弦波にできるのは、電力変換器のまさに“究極の形”だ。2017年中には、製品化したいと考えている。

参考文献
1)Ken Yamada、 Tsuyoshi Higuchi、 Eiji Yamamoto、 Hidenori Hara、 Mahesh M. Swamy、 Tsuneo Kume: “Integrated Filters and their combined Effects in Matrix Converter”、 IEEE/IAS Ann. Meeting Conf.、 pp.1406-1413 (2005)
2)K. Yamada et al.、 “Filtering techniques for matrix converter to achieve environmentally harmonious drives、” in Proc. EPE、 2005.

 今回開発したマトリクスコンバータの入力電流と出力電圧(出力線間電圧)の歪みは、いずれも5%以下と小さい。この値が小さいほど、正弦波に近いことを表す。5%以下であれば、もはや「正弦波」と言って過言ではない。

コスト削減や雑音問題の回避に向く

 マトリクスコンバータでは、その独特なPWM制御により、原理的に入力電流を制御できる。入力電流の歪みが小さいほど、容量の小さい電源設備での使用が可能となり、電力会社との契約電力を削減できれば、電力コスト削減につながる。

 入力電流の歪みは、同じ電源に接続した他の機器にとって大きな電磁雑音源になる。入力電流の歪みを抑制できれば、この問題を回避することができる。

 マトリクスコンバータの出力電圧は、PWM制御を行っているため矩形波状の波形となる。このとき、出力電圧の歪みを小さくできればマトリクスコンバータで駆動するモーターの効率を改善できる。

 例えば、容量が数10kW以上の大きなモーターの場合、効率を5%程改善できる場合がある。出力電圧の歪みを抑制できれば、モーターに流れる高周波電流による振動に起因するモーター騒音を低減できる。特に歪み成分の周波数を20kHz超にすれば、騒音は人間の耳で聞こえなくなる。

 サージ電圧の問題の解決にも向く。モーターが変換器と離れた場所にあるほど、ケーブルのインダクタンスが増加し、モーター端子間にサージ電圧が発生しやすい。出力電圧が正弦波状であれば、こうしたサージ電圧が発生しないため、配線長を気にすることなくモーターを駆動できる。

 つまり、入出力の電流と電圧の歪みが小さいマトリクスコンバータが実現できれば、電力面で優位なだけでなく、マトリクスコンバータの設置環境を問わない、いかなる環境でも使用できる電力変換器となる。

 こうした特徴は、我々が長年培ったマトリクスコンバータ技術やフィルター技術、さらにSiCパワー素子を適用したことで実現できる。本稿では、その実現技術について2回にわたり、解説する。

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