(前編はこちら

 エッジコンピューティングが有効になる代表的な環境は3つある(図1)。(1)自社に設置したシステム上で運用するアプリケーション(オンプレミスアプリケーション)、(2)データの集約と管理、(3)帯域を多量に消費するコンテンツの受配信だ。

図1 エッジコンピューティングが有効な3つの環境
図1 エッジコンピューティングが有効な3つの環境
[画像のクリックで拡大表示]

(1)オンプレミスアプリケーション


 オンプレミスアプリケーションとは、ネットワークの遅延によって、大きな影響を受けるミッションクリティカルなアプリケーションを拠点内で動かす形態である。たとえば、工場の自動生産設備を管理する基幹システムが通信の遅延によって、生産設備間の連携に齟齬が生じると、大きな事故や設備の故障などにつながる。今後はERP(Enterprise Resources Planning)やCRM(Customer Relationship Management)のアプリケーションを介した分析システムと生産設備が直接つながり、自動的に工場を運営することが一般的になる。エッジコンピューティングの使い道として、急に通信が途切れた場合、従来型のFA基幹アプリケーションを自社の工場内にあるシステム上で稼働させるケースが考えられる。

 エッジコンピューティングを導入することで、分散型サービス拒否攻撃(DDoS)や長時間の停電などの原因によって、通信ができなくなっても、安全に停止、あるいは稼働させなければならないビジネスのコアとなる機能に対し、運用に必要なアプリケーションをオンサイトで稼働できるようになり、冗長性と可用性を向上できる。

 また、法的な制約やセキュリティー上の要件などから、会社の施設から外部に出すことができないデータを扱うシステムについて、その部分にエッジコンピューティングを導入し、オンプレミスアプリケーション上で運用することも選択肢の一つである。