日経デジタルヘルス座談会「情報化が切り拓く、ソーシャルホスピタル実現への処方箋」<第1回>

効率化、やめませんか?

江崎禎英氏 経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課長

伊藤 瑳恵=日経デジタルヘルス

  • 2017/02/08 04:00
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 2025年には認知症患者が700万人に上ると言われています。これが現実になれば、消費税を25%に引き上げなくてはなりません。10%への引き上げさえあれほど議論し、2年半先送りした国が、25%まで引き上げられるとは思えません。ドイツや英国は65歳以上の糖尿病患者の保険診療をやめました。このままでは日本も間違いなくそうなるでしょう。「なんでそうなるの?」という疑問を考え、前提を変える取り組みが迫られています。

経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課長の江崎禎英氏(写真:加藤康、以下同)
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 この状況を例えるならば、硫黄島の戦いに近いと思います。あれだけ厳しい戦いなのに、陸軍と海軍が連携しない、まさにその状況です。全体としてどうなるのか、という議論がほとんどされていません。例えば、病院にITを導入する際、「あったら便利なシステム」はいらないのではないでしょうか。必要なのは、「なくてはならないシステム」です。

 パーツの効率化は全体の解ではありません。お金がないから効率化を図るという考え方が根付いていると感じます。しかし、介護の問題は介護の中で、医療の問題は医療の中で答えを出そうとする姿勢こそが破綻に導いているのではないでしょうか。内閣官房の会議でしばしば“介護の効率化”という言葉が出てくるのですが、介護の効率化を図れば認知症は悪化してしまうでしょう。

 介護の仕事に携わる親族から、(1人の介護に使える時間が)昔は1時間だったが今は15分になってしまったという話を聞きました。できるなら介護される人が自分で着替えた方が良いですが、割ける時間が限られているため介護士が着替えをさせてしまうというのです。このように、今の介護はサービスを供給することに注力しているように感じます。

 私の田舎には信号機がなく、認知症の人も少ないです。もちろん老化に伴う物忘れこそありますが、田舎なのでやることがたくさんあります。忘れてしまうなら忘れるなりにいろいろなことができるのです。それを思うと、介護の対象となるのは本当に700万人なのかという疑問も生まれます。

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 医師の仕事の仕方も見直すべきです。病気になったら対応するのではなく、病気にならないようにするためのアプローチが必要なのです。かかりつけ医は患者を24時間365日診なければいけません。そうなれば、ITや情報共有が不可欠となり、看護師が注射を打つ必要だってあります。こういった現実に制度が合わせる必要があるのです。

 人生は2周あります。そして、後半の人生を豊かにすることが結果的に社会保障の問題の解決につながると思うのです。納得できる終末期として、生涯役割を持ち、役に立っているという実感のある中で家族に看取られる――。ある意味、昔に戻ったような輝かしい未来を想像しています。私たち経済産業省では「高齢化対策」という言葉を禁止しています。人が健康で長生きすれば、社会は必ず高齢化するからです。それを前提にもう一度社会構造を見直したとき、答えが出るのではないかと思っています(談)。

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