この先、介護人材の不足がかなり大きな課題になってきます。2025年には介護職員が38万人不足するとの推計もある。この需給ギャップを埋めなければ、社会は成り立っていかないはずです。

日本介護福祉士会 会長の石本淳也氏(写真:加藤康、以下同) 
日本介護福祉士会 会長の石本淳也氏(写真:加藤康、以下同) 
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 介護職員はこれまで、あれもこれも何でもやるという働き方をしてきました。今後は介護の職能をいくつかに分け、プロフェショナルが担うべき役割を明確にすることが求められると思います。地域を支えていくうえでは、ライセンスを持たない人でも介護の一端を担えるような仕組みが必要でしょう。

 政府の介護分野の重点化項目を見ても、ロボットやAI(人工知能)の活用がうたわれるようになりました。これらをいかに現場でうまく活用できるかを、業界としても考えなければなりません。介護職員は全般に年齢層が高く、デジタル技術にアレルギーを持つ人も少なくないですが、そうも言っていられません。何としても使いこなそうという、積極的な取り組みが求められます。

 とはいえ、アナログでなければ対応できないことも現場にはもちろんある。人がやるべき仕事と技術に任せられる仕事、その両方がきちんと評価される仕組みが重要でしょう。

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 私は熊本出身ですが、昨年の震災で、日常はあっという間に非日常に変わってしまうものだと痛感しました。だからこそ、日々の当たり前の暮らしを支えることが社会保障のあるべき姿だと思います。これからの社会に必要なものを徹底して生活者の目線で考えていかなければ、できあがった仕組みにはひずみやムダが生じます。

 介護は生活者の暮らしに寄り添う仕事であり、老いながらもその人なりの暮らしができるように支える仕事です。生活者が感じる満足感や幸福度はサイエンスでは評価しにくいものであり、サイエンスとは別の切り口からこれらを測るスケール(尺度)ができるといいなと思います。

 国民が介護の問題をどれだけ我が事として考えているかといえば、自分の親が要介護にでもならなければ関心を持たないのが実情でしょう。介護はすべての国民が向き合うべき問題だという認識を浸透させない限り、介護につきまとうネガティブなイメージは覆せないと感じています(談)。