「Pepper君お久しぶり」

 今回のモニター調査では、可能な限り毎回同じ高齢者に参加してもらうのが条件だ。そして30人近くの参加者の中から要介護度別に10人程度のターゲットを設定し、余暇問題研究所が毎回どのような反応をしているのかの観察記録を取る。

 吉村氏によれば、この継続開催が実証の肝とのこと。これまで川崎市の事例のように単発で導入する機会はあったものの、1度限りでは物珍しさだけで終わってしまうことが多く、実際の現場の様子を丹念に汲み取ることは困難だった。そこで専門家である余暇問題研究所代表の山崎律子氏にコンタクトを取り、同研究所が監修したアプリをPepperに盛り込むことにした。

 レクリエーションのプログラムは40分を目安とし、高齢者が飽きないように体操や歌をテンポよく進行していく。いざPepperが登場すると、「Pepper君お久しぶり」といった掛け声も飛び、明らかに会場が興奮している様子が伝わってくる。

 まずはPepperが何人かの参加者の名前を呼び上げ、「元気ですか?」と問いかけることから始まった。「名前を呼ぶことで距離がぐっと近くなる」(山崎氏)そうで、この掛け合いも高齢者が楽しみにしている要因の1つだという。事実、呼ばれた人たちは笑顔を浮かべながらPepperとの会話を楽しんでいた。

 その後、準備体操、グーとパーを前に突き出すリズム体操、童謡“雪”の振り付けを伴った歌へと続く。認知症が進む参加者もいる中、集中力が切れてしまい途中で徘徊することも想定内だそうだが、今回のレクリエーションで離脱する人は皆無だった。デイホームの職員がマイクを持ちながらPepperとの橋渡し役を務め、間延びしないように進める工夫を施しているのも大きい。

振り付けを伴った童謡“雪”を歌う
振り付けを伴った童謡“雪”を歌う
[画像のクリックで拡大表示]