電子カルテと治療計画を活用

 米Google社の人工知能(AI)がプロ囲碁棋士に勝利――。馬込氏は冒頭こんなニュースに触れ、機械学習、特に多段の人工ニューラルネットワーク(ディープニューラルネットワーク)を使った機械学習が多くの分野で「ナンバーワンの予測精度を実現している」(同氏)と話した。いわゆる「深層学習(ディープラーニング)」と呼ばれる手法だ。

 では、機械学習は医療分野ではどのように役立つのか。考えられる応用の1つは、オーダーメード医療だという。治療の成果、例えば予後(生存期間)の延長効果をそれぞれの患者に対して「精度良く予想する」(馬込氏)ことを可能にする。

 がんに対する放射線治療を例に取れば、こんな形だ。機械学習の数理モデルに対し、入力特徴量として「年齢」「がんの組織型」「放射線量」「遺伝子情報」などを入力する。出力として得られるのは、放射線治療による「腫瘍制御確率」「障害発生確率」などである。

 こうしたコンセプトに基づいて馬込氏が試みたのは、電子カルテに含まれる臨床データと放射線治療計画のデータを基に、治療後生存期間を機械学習で予測すること。膠芽腫(こうがしゅ)と呼ばれる難治性の悪性脳腫瘍の治療例から、術後放射線治療を行った場合の生存期間を機械学習で予測。実際の生存期間と比べ、予測精度を検証した。