技術革新のスピードは速い。あと5年か10年もたてば、受付には予診を取るためのロボットが置かれ、外来診療は大きく変わるだろう。

 例えば、患者が外来受付にやって来ると、ロボットが「今日はどうしましたか?」と尋ねる。ロボットは患者と対話を重ね、その場でトリアージを行い、必要な検査をリストアップして検査室へ患者を誘導する。

 検査を受けた患者が診察室に入ってくれば、来院時の所見や検査結果だけでなく、他院を含めた過去の受診歴、処方歴などが集約されて画面に表示され、医師はそれを見ながら問診、身体診察を行う。問診で得た情報を登録すれば、幾つかの疾患が候補として提示されるし、見落としがちな疾患は赤字でアラートが出る。医師が疑わしい疾患をクリックすれば、最新のエビデンスに基づき鑑別に必要な検査項目や確認すべき所見が示され、その情報を踏まえてさらに問診や診察を進め、診断を付けた後には処方薬の候補も提示される──。こんな診療スタイルが夢物語ではなくなるかもしれない。

知識量で勝てるわけがない

 AIは、世界中で発表される大量の医学、サイエンスに関する知識を学習できるものになるだろう。いくら人間が知識量で競おうとしても、疲れを知らず四六時中学び続けるAIにかなうわけがない。医師に敵対するものと捉えるのではなく、技術の発展により私たちが常に網羅的な知識を記憶し続けることから解放されるのだと受け止めるべきだ。AIは、最新のエビデンスを教えてくれたり、単純作業を肩代わりしてくれる良きパートナーになる。

 いわば、最新のエビデンスやガイドラインを記憶した知識・理論先行型の総合診療医が、誤診や見逃しが起こらないように常にそばにいて助言をしてくれるようなもの。医師にとってこれほど心強い存在はない。