多数のディスプレーやロボットに囲まれた、近未来型の手術室が2016年6月、東京女子医科大学で産声を上げた。その名は「SCOT(Smart Cyber Operating Theater:スコット)」。

 手術の進行や患者の状態に関するありとあらゆる情報をリアルタイムに可視化し、執刀医の意思決定を支援。それにより治療の精度や安全性を高める。SCOTはそんな機能を持った手術室だ。同大学先端生命医科学研究所脳神経外科教授の村垣善浩氏がリーダーを務めるプロジェクトで、5大学14企業が共同開発した。プロトタイプ(写真1)が同大学に完成し、2019年夏に治療を開始する計画だ。

写真1 東京女子医大に構築されたスマート治療室「SCOT」
写真1 東京女子医大に構築されたスマート治療室「SCOT」
患者の状態や事前に撮影したCT、MRIなどの各種画像、バイタルなど全ての情報を表示して術者の意思決定を支援するほか、術者の負担を減らすコックピットを用意した、近未来型手術室の開発が進められている。
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 基本仕様モデルを導入した広島大学病院では、患者の脳神経外科手術への適用に向けた検証が始まった。 従来の手術室は無菌環境を整えた、手術を行うための空間でしかなかった。SCOTは「手術室全体をあたかも1つの医療機器のように機能させる」(村垣氏)。従来はばらばらに動いていた手術室内の機器を接続し、情報のやり取りを可能にする。

 術中の各機器の稼働状況や患者の生体情報をリアルタイムに収集し、ディスプレーに全て表示。電気メスや麻酔装置の稼働状況、内視鏡や顕微鏡による術野画像、手術ナビゲーションシステムから得られる治療器具の位置情報、生体情報モニターや神経機能検査装置で測る患者の生体データなどの情報も表示して治療の意思決定を支援するとともに、機器が正しく稼働しているかどうかも監視する。