日本はX線CT装置の保有台数で世界一を誇る医用画像大国だ。一方、その読影を担う放射線科医の数は米国などに比べて圧倒的に少なく、一部の専門医に負荷が集中している。この状況は病理医も同様だ。

 画像診断は治療の出発点となるため見落としは許されないが、専門医は人為的ミスを誘発しやすい苛酷な労働環境で、判断の難しい症例に日々向き合わざるを得ない状況だ。専門医の不在に悩む医療機関も多い。

学習データの質で差異化

 AIが、放射線画像や病理画像から専門医でも見逃してしまうほど小さな病変を検出したり、可能性の高い疾病候補名を提示する──。そんな画像診断支援システムを開発する動きが世界中で進められている(図6)。

図6 世界で開発が進む画像診断支援システムの概要(取材を基に編集部作成)
図6 世界で開発が進む画像診断支援システムの概要(取材を基に編集部作成)
病院などに蓄積した胸部X線画像やCT・MRI画像、病理画像と診断記録を基にAIと画像解析技術を使った画像診断支援システムの開発が進められている。専門医でも判断が難しい症例や病理医・読影医のいない施設でも画像データを送れば判定結果が返送される仕組みの開発を目指す。
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 それに挑む国内企業の1つが、エルピクセル(東京都文京区)。東京大学の研究者たちが2014年に立ち上げたベンチャー企業である。現在、国立がん研究センターなど約10の医療機関と、AIを用いた画像診断支援システムを共同開発中だ。