「リアル開発会議 2016 Winter」の特集「集客の秘訣は地方に聞け」では、大洗町、宮城県、横須賀市、阿智村、尾道市の観光振興の成功例を取りあげた。いずれも地方自治体やそれに準ずる組織が集客事業の中核になっており、それぞれ別々の素材で、異なる集客手法を実践し、結果を出している。

リアル開発会議
リアル開発会議は、新事業や異業種連携を推進するコミュニティーです。オープンイノベーション型の新事業開発プロジェクトとして、幅広い業界の企業が参画できる開発テーマを複数用意しています。
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 今回紹介した成功例には幾つか共通項がある。まず、適切な「ヒト」が中核となって推進できているところだ。そして、その人が自ら動き、地域が新たな観光資源を受け入れるように地道に努力している点も共通する。

汗を流して溶け込み地元や企業の協力を引き出す

 例えば大洗町の事例では、アニメ放映で降って湧いた「ガルパン聖地巡礼」という観光資源を、地道な努力で地域の住民に浸透させ、観光資源として育ててきた。キャラクターの看板を作って飲食店や商店、娯楽施設などに配布、それぞれが愛着を持って管理する地盤を作ってきた努力が、スマホを活用した新たな観光資源を生み出した。

ガルパン聖地・大洗町、ファンの“第2のふるさと”に
アニメ放映後にファンが舞台の地域を訪れる「聖地巡礼」が盛り上がりを見せている。一過性のブームで終わらせず、ファンに「また行きたい」と思ってもらうためには何が必要なのか。AR(拡張現実感)とGPSを使うスマホアプリを活用する茨城県大洗町や宮城県の取り組みを紹介する。

 横須賀市の事例では、市の観光サイトを手掛けるデザイナーが中心になって、「イングレス」や「ポケモンGO」というスマホゲームのブームを、市の観光振興につなげた。そのために職員自らがゲームを楽しみ、ゲームを楽しむ地域のコミュニティーと交流して、街全体でゲームを盛り上げる雰囲気を作り上げている。

ポケモンGOを観光名所に、横須賀市職員が自ら楽しむ
全世界で5億ダウンロードされ、社会現象となったスマートフォン(スマホ)ゲーム「ポケモンGO」(米ナイアンティック)。ユニークな取り組みで「ポケモンGO観光振興」の成果を着実に出している自治体が神奈川県横須賀市だ。実は同市の位置情報ゲーム活用の始まりは2年以上前に遡る。

 企業の力をうまく利用して、あまりお金を掛けずに事業を成功させている点も共通する。阿智村は天体望遠鏡メーカーのビクセンと業務提携を結び、訪れる観光客が月を観察するための望遠鏡の提供を受けている。尾道市は、シマノや台湾ジャイアントといった大手企業と組み、瀬戸内海を渡る七つの橋を、サイクリストの聖地として世界に喧伝した。

しまなみ海道を世界のサイクリストに売る
瀬戸内の島々を結ぶしまなみ海道は、連なる7つもの橋を自転車で渡れる世界でも類を見ない道路だ。世界中からサイクリストが押し寄せる「聖地」となっている。その仕掛け人の1人である尾道市長の平谷祐宏氏は「マーケティングのターゲットを絞って粘り強く続けることが重要だ」と語る。