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 瀬戸内の島々を結ぶしまなみ海道は、連なる7つもの橋を自転車で渡れる世界でも類を見ない道路だ。世界中からサイクリストが押し寄せる「聖地」となっている。その仕掛け人の1人である尾道市長の平谷祐宏氏は「マーケティングのターゲットを絞って粘り強く続けることが重要だ」と語る。(編集部)

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 尾道市には、6つの島を結ぶ7つの橋(新尾道大橋・尾道大橋、因島大橋、生口橋、多々羅大橋、大三島橋、伯方・大島大橋、来島海峡大橋)から成る自動車専用道路がある。愛媛県今治市につながる、「瀬戸内しまなみ海道」の愛称で親しまれている道路だ。橋の部分は原付・自転車歩行者道が併設されているため、自転車で全区間を走れる。

瀬戸内しまなみ海道の原付・自転車歩行者道。しまなみ海道は7つもの橋を自転車で渡れる世界でも類をみない道路だ
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瀬戸内しまなみ海道の原付・自転車歩行者道。しまなみ海道は7つもの橋を自転車で渡れる世界でも類をみない道路だ

 この道路のもともとの目的は観光ではなく、地元に住む人々の生活と物流だった。2005~2006年に2市3町(因島市、尾道市、瀬戸田町、御調町、向島町)が合併して1つの尾道市になったとき、完成当時、世界最大の斜張橋だった多々羅大橋のような特徴的な橋を持つしまなみ海道を「観光資源としてどのような形で生かしていくか」という機運が高まった。これが取り組みの始まりである。

2005~2006年に2市3町が合併して1つの尾道市になったとき、しまなみ海道を観光資源として生かす機運が高まった
2005~2006年に2市3町が合併して1つの尾道市になったとき、しまなみ海道を観光資源として生かす機運が高まった
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 政府の掛け声で2015年に「地方創生」がスタートしたが、ゼロから取り組み始めても2019年までに結論や方向性を示すのは非常に難しい。だから私たちは、これまでの地道な活動を加速させて、地域の活性化につなげようと考えた。私が尾道市長に就任したのは2007年だが、そのときにちょうど2009年に開催するしまなみ海道開通10周年のイベントの検討が始まっていた。「このイベントを地域活性化へとつなげたい」と考え、自分たちのもつ強みを分析することから始めた。