※「新・公民連携最前線」2015年12月25日付の記事より
「健康まちづくり」をテーマにした本セッションでは、産官学の計10人が参加して座談会を実施。「まちづくりにおける公民連携の期待と可能性」と「公民連携を成功に導くポイント」についてに、活発な意見を交換した。
――これからの公民連携の期待や可能性について話を聞いていきたい。最初に見附市の久住市長から。見附市ではコミュニティ銭湯の運営に民間から2社が手を挙げたとのことだが、企業を呼びこむためにどのような工夫が必要か。
久住 民間企業は温泉施設を建設する際、土地代、建設費、設備費を支払い、それを返済しながら利益を出していく。ならば民間企業が望む設計で我々があらかじめ建物を作れば、彼らの負担が減ると考えた。
土地代や建設費を市がカバーする代わりに、赤字なら企業が全額負担、黒字なら利益の半分を市に納入するという条件で民間企業を募った。このような条件で指定管理をお願いして、果たして手を挙げる企業がいるのかどうか。そこは懸念材料でもあった。新潟県内からも問い合わせはあったが、最終的には県外の業者が残り、「この条件でも受けたい」と申し出てくれた。
こうした発想で公の施設を作ればいいと思う。同様の条件で「道の駅 パティオにいがた」は3年が経過し、2016年4月からは利益が出る見込みも立った。コミュニティ銭湯が成功すれば、公が維持管理の資金を大きく提供せずとも、「民間の経営ならば持続可能」という1つの事例になる。ここまで来るのに議会の反対などの苦労はあったが、壁を乗り越えた感がある。
行政に求められるスピーディな行動力
――見附市には市民や企業からのアイデアを吸い上げる制度があるのか。
久住 特にそうした仕組みはない。私がこうした会議に参加して気になったアイデアがあると、そのメモをすぐに担当職員に渡すようにしている。今までの役所には「新しいことができない、チャレンジしてはいけない」という風潮があった。何年もかかったが、見附市でもチャレンジしようとする職員が増えてきた。職員の意識も、何でもトライする、失敗してもいいんだという考え方にならないと、次にはつながらない。
久野 私が「Smart Wellness City(スマートウエルネスシティ)」でお付き合いしている見附市の久住市長、高石市の阪口市長は、さまざまな課題に対してのリアクションが非常に速い。これからはますます、行政と民間が組むことによって、いかにスピーディに展開できるかが重要になってくる。とくに2025年問題、いわゆる団塊の世代の方々がすべて75歳以上に到達する社会があと10年で訪れる中で、「ゴールを設定したがその通りにならなかった」では済まなくなる。
――阪口市長、この意見については?
阪口 行政だけではなく市民、民間企業、大学などとも連携して取り組む必要がある。
大阪だけでなく千葉、埼玉など、我々のようなベッドタウンは一気に高齢化する。その問題をどのようにして克服していくべきか。少子化対策では、母親たちが子どもを育てやすい、そして働きやすい環境をどう作り上げていくべきか。私たちの取り組みが、まさに国家の命運を握っている。ありとあらゆる知恵を絞り、コンパクトシティネットワークを活用して、課題を克服するきっかけとするのがこうした会議の目的でもある。
――笠間市も超高齢化・少子化の問題は深刻なのでは。
山口 それは同じだ。平成18年(2006年)の合併で当初は8万1000人ほどいた人口が、今では7万7000人。この10年間で約4000人減少した。
そこで生まれたのが健康づくりを核とした「健康都市」宣言と、東京に笠間市の情報発信基地を作るシェアタウン戦略、駅周辺にコンパクトに機能を集約する笠間版CCRC構想だ。CCRCでは1つの建物だけではなく、空き家を1つのエリアの中で活用して分散して住んでもらうことも候補として考えている。そして私も見附市長と同様、職員にはいいものはどんどん真似しなさいと言っている。