集団の中での立ち位置を示す

 次に古井氏が挙げたのは、企業や地域で盛んにおこなわれているウォーキングイベント。同氏らの調査によると、こうしたイベントにはいつも同じ人ばかりが参加する傾向がみられるという。具体的には「ふくよかな人ほど参加し、華奢な人の参加率はふくよかな人の1/5程度」ということがわかった。

 しかし、ふくよかな人は参加率こそ高いが、「継続率が低い」と古井氏は指摘する。痩せている人の参加率の低さも課題だ。日本人は痩せていても隠れメタボや高血圧の人が少なくないからだ。

 ウォーキングイベントへの参加や継続を呼びかけても、健康に対する意識には個人差があり、参加することへの敷居は決して低くない。そこでカギとなるのが「他の動線をつくること」だと古井氏は指摘する。

 例えば、太っている人は特定保健指導を受けている人が多い事実から、「指導の中で保健師がウォーキングについて声掛けすることで、動線をつくる」(古井氏)。指導のたびにウォーキングの話をし、継続を促す狙いだ。痩せている人に対しては、特定健診の結果を使い、「あなたの血圧は社内で何位です」と伝える動線が考えられるという。集団の中での具体的な立ち位置を示すことで、自発的な取り組みを促す狙いだ。