東京大学 政策ビジョン研究センター 特任助教の古井祐司氏
東京大学 政策ビジョン研究センター 特任助教の古井祐司氏
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 「今後社会の中に予防が本格的に入っていく。まずは一人ひとりがデータヘルスの土俵に上がってほしい」――。東京大学 政策ビジョン研究センター 特任助教の古井祐司氏は「データヘルス・予防サービス見本市」(2016年12月14日、主催:厚生労働省)に登壇。「予防・健康づくりにおけるICT活用」と題した講演でこう呼びかけた。

 古井氏らのグループは、5年前から現役社会人36万人の健康診断結果やレセプトデータを追っている。調査を通じて、高血圧やメタボリックシンドロームの従業員が多い企業ほど、「加齢に伴う健康状況の悪化スピードが早いことがわかった」(古井氏)。リスクの高い同僚が多いほど、元気な同僚も加齢とともに健康状態が悪化しやすいというわけだ。職場環境や仲間意識が影響を与え、いわば「肥満は伝染する」(古井氏)。つまり、「予防医学は個人から集団へ適用する必要がある」と古井氏は訴えた。

 予防医学を集団へ適用した例として、古井氏はシステム系従業員を抱えるある企業の例を挙げた。この職種は一般に、「突然夜中に脳梗塞で倒れる人が多い」と古井氏は話す。これは、長時間座った状態で仕事をするため血液の流れが悪くなり、「客先で夜中まで仕事をすることで緊張感やストレスを長時間抱えているため」と古井氏は推察する。日中に測定する血圧は140mmHg程度でも、夜中に測ると170mmHgまで上がる人が少なくないというのだ。

 そこでシステム系従業員の多いある企業では、朝の朝礼の後に部署全体でストレッチやラジオ体操を行う時間を設けたという。その結果、従業員間のコミュニケーションを図ることにもつながった。集団で予防医学を行うことは、「人と人がつながるきっかけにもなる」(古井氏)。