経済産業省の江崎氏
経済産業省の江崎氏

 従業員の健康維持に取り組まない企業は存続できない、そんな時代が来る――。経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課長の江崎禎英氏は「データヘルス・予防サービス見本市」(2016年12月14日、主催:厚生労働省)に登壇し、健康経営の重要性を訴えた。同氏は「かつては環境問題に投資をしても意味がないと言われていたが、いまや環境影響に配慮しない企業は存続できない。従業員の健康も同様に、企業にとって今後、取り組みが不可欠になる」と話した。

 健康維持の考え方について、江崎氏は「ヒトという種族に与えられた生物学的寿命は120年。還暦という言葉があるが、ちゃんと生きれば暦は2周する。1周目は子育てなどに時間を多く割くことになるが、2周目は自分のために使える時間が増える。せっかくの2周目を楽しく生きるには、1周目から健康に気を付けなくては。1周目の人生で多くの時間を使う会社での取り組みが大切」と説いた。

 医療費の増大については「医療費がかさむこと自体が問題なのではない。せっかく医療費を使っても、そのサービスを受けたお客さん(患者など)がベッドに寝たまま暮らしていて幸せになれないことが問題」と指摘。「高齢者の医療費については、先進国でも切り捨て行政が始まっているが、健康寿命が平均5年延びれば、日本はこのままの制度を維持できる。逆に延伸できなければ、消費税を25%まで引き上げても国が破たんする可能性がある」とし、財政面からも健康寿命延伸の取り組みが不可欠であることを示した。

 江崎氏は、従業員の健康を大切にすれば、企業は業績を上げることができると説明する。企業が従業員の健康に1米ドル投資すれば、3米ドルの利益を得られるとする米Johnson & Johnson社の有名な分析を紹介した。