厚生労働省 保険局 保険課 主査の岩井恒太氏は、「データヘルス・予防サービス見本市」(2016年12月14日、主催:厚生労働省)に登壇し、「平成28年度保健者データヘルス全数調査」について、結果のサマリーと今後の課題を語った。保険者データヘルス全数調査は厚労省保険局と日本健康会議が、市町村国保、健保組合、協会けんぽ、 国保組合、広域連合、共済組合等の全保険者を対象に実施した調査で、初調査となる今回は回答率が92.6%に上った。

厚生労働省 保険局 保険課 主査の岩井恒太氏
厚生労働省 保険局 保険課 主査の岩井恒太氏

 調査によれば、データヘルス計画の策定に外部事業者を活用している保険者は約3割。このうち1/3が、独自手法や先進的なアイデア、自組織への理解などの点で期待を下回ったため、委託事業者の活用はお勧めできないと回答している。一方で、新たな視点が持ち込まれる、精度の高い詳細な分析が得られるなど、外部事業者を評価する声もあった。「地域・職域に根ざしたオーダーメイドのデータヘルス計画を保険者は求めている」(岩井氏)。

 インセンティブ事業は1/3の市町村、3割の健康保険組合で導入されている。健康診断や保健指導、健康教室などへの参加に対してインセンティブを付与する形が多く、健診の結果が改善するなどの成果に対して付与する形はやや少ない傾向だ。インセンティブによる行動変容などの効果検証を予定しているのは、3割程度にとどまっている。岩井氏は「特に、電子的に検証できている割合がまだ少ない」と指摘する。

 岩井氏は調査結果を振り返り、保険者と地域の医療関係者との連携促進に都道府県の活躍が求められるとした。例えば、糖尿病予防事業について「マンパワー不足で6割強の保険者が取り組めていないが、重症化予防を単にアウトソースしてもうまくいかない。地域の医師会やかかりつけ医との連携が課題になる」とした。

 また、どの事業についても目標設定や効果検証は重要と説明。わかりやすい健康情報の提供については「インターネットでの情報提供が1割未満と少なく、見せ方も含め、伸びしろがある」とする。後発医薬品はほとんどの保険者で取り組んでいるが「差額通知の工夫などに課題がある」と、ここでも伝え方、見せ方の工夫の必要性を訴えた。

 さらに、保険者種別にかかわらず、外部委託事業者の活用は検討していくべきとの認識を示し、そのためにも受託する事業者側にも成長が求められるとした。