DolbyVisionを採用したソニーの有機ELテレビ「AIEシリーズ」
DolbyVisionを採用したソニーの有機ELテレビ「AIEシリーズ」
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 「CES 2017」(2017年1月5~8日、米国ラスベガス)では、米Dolby Laboratories社が開発したHDR方式「DolbyVision」の採用メーカーが大幅に増えていることが分かった。もともと2014年のCESで、初めてのHDRのエンド・ツー・エンドのソリューションとして、シャープや東芝、中国TCL社などのテレビメーカーのブースにひっそりと展示されていた(関連記事1)。今をときめくHDRトレンドの草分けだ。その後、Dolby Laboratories社によって開発されたPQカーブがSMPTE(Society of Motion Picture & Television Engineers)で標準化され、Ultra HD Blu-rayで採用されたHDR10方式でもそのまま使われている(関連記事2)。

 DolbyVisionとHDR10の違いは何か。DolbyVisionが12ビットシステムであるのに対し、HDR10は10ビット。伝送は、HDR10が1本線で10ビット信号を送るのに対し、DolbyVisionはベースとエンハンスのダブルレイヤーだ。DolbyVision信号を受け取ったテレビの振る舞いは以下の通り。

(1)DolbyVision非対応テレビはBT.709(ハイビジョン)、BT.2020(次世代放送)などの標準映像規格の部分を送るベースレイヤーのみ再生
(2)DolbyVision対応テレビは階調、色の差分情報量を伝えるエンハンスレイヤーも加えて再生する。ここには、シーンの輝度変化やピーク輝度の値などのHDR再生に必要なメタデータも収められる。

 これまで映画作品のHDRでは、ライセンス料の要らないHDR10が先行していた。これまで米国でのDolbyVisionの展開は、OTT(Over The Top)の米VUDU社などが「Warner Bros. Home Entertainment」の作品を配信し、対応テレビは米VIZIO社と韓国LG Electronics社製など一部に限られていたが、今年のCESでは、DolbyVision採用を表明するホームエンターテイメント会社、テレビとUltra HD Blu-rayのブランドが激増したことが分かった

 まずUltra HD Blu-ray作品では、「LIONSGATE」「Universal Pictures Home Entertainment」「Warner Bros. Home Entertainment」が2017年初旬にDolbyVision採用のディスクをリリースする。筆者はWarner Bros. Home Entertainmentのマーケティング担当者にインタビューした。

 「Warnerは、OTTとUltra HD Blu-rayでリリースするHDR作品はすべて、DolbyVisionで制作しています。DolbyVisionの制作ツールでは、制作と同時にHDR10信号も同時に作成されるからです。これまで51タイトルをDolbyVisionで制作し、VUDUを通じて配信してきました。2017年、DolbyVisionのUltra HD Blu-rayでリリースすることは決まっていますが、具体的なタイトル名、本数はまだ検討中です。これまでHDR10のUltra HD Blu-rayは23タイトルをリリースしています。この既存タイトルをDolbyVisionで再度リリースすることは可能ですが、おそらく、ダブルリリースはなく、新規タイトルをDolbyVisionでリリースするのではないでしょうか」。