ラスベガスのネオンサイン(1)
ラスベガスのネオンサイン(1)
SDRの映像。
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ラスベガスのネオンサイン(2)
ラスベガスのネオンサイン(2)
4000cd/m2のHDRの映像。白地のネオンの境目がよく分かる。
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LEDバックライトの発光の様子
LEDバックライトの発光の様子
分割数が多いので、それなりに映像が判別できる。
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 HDR(ハイ・ダイナミック・レンジ)のリファレンスのガンマカーブ、PQカーブ(SMPTE ST2084)は1万cd/m2まで白ピーク輝度を設定できるが、ハリウッドの映画のHDRグレーディングでは4000cd/m2が限界だ。グレーディング用の定番のマスターモニターである、米Dolby Laboratories社のPULSARディスプレー(水冷式。直下型LEDバックライト+ローカルディミンング)の白ピーク輝度が4000cd/m2だからだ。

 一方、再生するテレビはどうか。業界団体のUHD Allianceで「液晶テレビは最高輝度1000cd/m2、有機ELは540cd/m2」という必要スペックを定めたが、これでは、4000cd/m2でグレーディングされたHDRコンテンツの高輝度部分は再生できない。

 ソニーが開発した液晶テレビの新バックライト技術「Backlight Master Drive」は4000cd/m2を実現した。これまでの「直下型LEDバックライト+ローカルディミンング」では領域分割数が数百だったが、それを1000以上(具体的な数値は非公開)まで増やしている。細かく制御できるので、暗部で使わない電流を明部に回せる。この結果、消費電力を大幅に増やさずに、高輝度を実現した。

光学設計、高密度実装、制御などの技術を結集

 Backlight Master Driveの開発は2年前から始まった。まず、バックライトをどれくらい分割すると、どれほどの輝度が得られるかの検証から始めた。HDRが話題になる前のことだ。バックライト、光学、制御、信号処理などのさまざまな要素を専門的に開発し、さらに全体ですり合わせを行い、詰めていった。高輝度LEDを集光させる光学設計、高密度実装、領域ごとに白ピークの突き上げを駆動させる制御アルゴリズムなどを取り込んだ、まさに合わせ技だ。

 これらがきちんと組み合わされないと、4000cd/m2は実現できない。PULSARが水冷だったのに対し、同じ4000cd/m2でもBacklight Master Driveは空冷である。これが、エンジニアリングの進歩とこだわりの証拠だ。PULSARは色再現を追求するためにRGBのLEDバックライトを採用し、RGBの発光パフォーマンスを合わせるためにかなりの電流を投入している。今回のソニーの技術は、一般的な白色LED(青色LEDに黄色蛍光体を塗布したもの)なので、もともとの温度特性はRGBより有利だ。