日本遠隔医療学会 副会長の酒巻哲夫氏は、2015年12月9日に開催されたセミナー「どうなる? 遠隔診療」(主催:日経デジタルヘルス)で、遠隔診療の有用性や課題について講演した。

 酒巻氏は、患者のそばにいる担当医を遠隔地の専門医がアシストするDtoDや、医療機関と在宅患者が通信する(多くの場合、訪問看護師がサポートする)DtoPの遠隔診療の様子を映像で紹介。遠く離れていてもスムーズにやりとりができている様子や、診療に使える画質での画像・映像の送受信が一般普及レベルの機器でも可能なことなどを示した。「医師が患者に様子を聞くなかで、患者に笑顔が出るのが印象的。遠隔でも心が通じているようだ」(酒巻氏)。

講演する酒巻氏
講演する酒巻氏
[画像のクリックで拡大表示]

 遠隔診療の有用性については、脳血管障害の後遺症や末期がんの患者を対象にした、安全性に関するレトロスペクティブ調査(2010年度)の結果を紹介。遠隔診療を受けた在宅患者群と、訪問診療を受けた在宅患者群の比較で、死亡や入院などのイベント発生率は変わらないことが確認できたという。

 患者の意向については、全国33医療機関で実施したアンケートの結果を報告した。アンケートによれば、DtoP、センシングデバイスなどによる遠隔モニタリングとも、「ぜひ実施したい」または「どちらかといえば実施したい」との回答が、合計で6割強を占めたという。

 遠隔診療によって、家族を自宅で看取ることができた人の講演の様子も映像で紹介した。講演の内容は、講演する男性の妻が、末期がんに苦しんでいたが、自宅で遠隔診療を受けることで子供たちのそばにいることができ、亡くなる前に、子供が将来読んで心のよりどころにできるような手紙を書き残すことができたというものだった。