ソニーグループ(ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングとソニーセミコンダクタソリューションズ)は、新しい裏面照射型CMOSセンサー(BSI)を「IEDM 2016」で発表した(講演番号:8.7)。特徴は、偏光素子(polarizar)を備えること。一般的な偏光カメラの場合、撮像素子と偏光素子は別部品である。例えば、BSIの受光部(PD:Photo Diode)の上方にあるオンチップレンズと、同レンズの上方に外付けするカバーガラスの間に偏光素子を配置する。今回のBSIでは、PDの上方に、金属製のワイヤーグリッドで作った偏光素子を設けて1チップ化している。これにより、従来よりも小型で安価な偏光カメラを実現できるとする。

 偏光カメラの代表的な用途は2つある。1つは、人の目では見にくい場所を撮影する監視カメラ。例えば、自動車のフロントガラスに太陽光が鏡面反射し、その反射光のせいで肉眼では見えない運転席の様子を撮影できる。フロントガラスで鏡面反射した光と、車内の人物からの反射光の偏光状態は異なる。そこで、フロントガラスで反射した光だけを分離することで、車内の様子を記録できる。

 もう1つの用途は、3次元計測である。計測したい物体の表面で反射した光の偏光状態を捉えることで、物体表面の凹凸をより細かく撮影できるようになる。ただし、偏光カメラで分かるのは変位量のみで、物体までの距離の絶対値は分からない。そこで、距離の絶対値も知りたい場合は、ステレオカメラのような距離センサーと併用することを想定する。

 今回試作した撮像素子は、上記以外の用途にも使えると研究グループはみている。新たな応用を模索するために、IEDMでの発表に踏み切った。

左が従来品、右が今回の試作品の構造(図:IEDM、作成:ソニーグループ)
左が従来品、右が今回の試作品の構造(図:IEDM、作成:ソニーグループ)
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