東芝と産業技術総合研究所 スピントロニクス研究センターの研究グループは、電圧駆動型の不揮発性磁気メモリー「電圧トルクMRAM」の書き込み誤り率を低減する新たな書き込み方式を開発した。「IEDM 2016」で発表する(講演番号:27.5)。

 同メモリーは、電流駆動型である従来のSTT-MRAMに比べて、書き込み電流が小さく、消費電力を抑制しやすい利点がある。だが、現状では書き込み時の誤り率が高く、「実用化に向けた重要課題」(同グループ)になっている。今回の書き込み方式は、その課題を解決する手段になり得るとする。

 電圧駆動型のMRAMでは、その名の通り、パルス電圧を印加して記憶素子(MTJ素子)の磁化を反転させて、情報を書き込む。このとき、負のバイアスで、かつパルス幅が1ns以下の高速なパルス電圧を印加すれば、書き込み誤り率の低下につなげられる。

 ただし、従来の磁気メモリー用の書き込み回路では配線の充放電に時間がかかるので、1ns以下のパルス幅できれいな波形のパルス電圧を印加するのは難しかった。

パルス電圧の説明
パルス電圧の説明
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